

検査・診断、治療や移植にかかわる
看護ケアのポイントや
患者さまの心のケアについて説明していきます。
先生からのメッセージは
現場の生のアドバイスをいただいています。
抗がん薬の副作用には、しびれなどの末梢神経障害があり、発生頻度はレジメンによって異なります。
脱毛や浮腫のように目に見える副作用ではありませんが、生活の質(QOL)に及ぼす影響は大きく、
推奨される予防薬もありません。
患者さんが延命を信じて治療を続けている場合、
「治療のために我慢」と症状を訴えないこともあります。
症状が日常生活にも影響するようになると治療への意欲が低下することもあるため、
精神的なサポートも含めた患者さんへのケアが大切です。
末梢神経障害は患者さん本人の主観的なものであり、客観的に観察することは困難です2)。 医療者が想像している以上に患者さんの日常生活に影響を及ぼしていることもあります。
薬の種類や投与方法によって、末梢神経障害の症状は異なります。ただし、薬剤の1回投与量や総投与量が多くなるほど出現しやすい傾向があることから、レジメンから出現時期や経過を予測することは可能です1)。
神経障害の評価には有害事象共通用語規準(CTCAE v5.0)などが用いられ、末梢性運動ニューロパチーと末梢性感覚ニューロパチーについてはそれぞれ評価されます。蓄積性、慢性の末梢神経障害に対しては、Grade3以上では原因となっている薬剤の減量や休薬延長、投与中止が検討されます4)。
表 神経系障害の評価
末梢神経障害があると、冷たいものを飲んだときに口の中や喉がしびれたような感じがしたり、喉が締め付けられるような感じがしたりします。また、冷たいものに触れたときに手足がピリッとすることがあります。
このような場合は、冷たいものを避けるように指導します。エアコンの冷気が直接当たらないようにしたり、洗面には水ではなく温水を使用したり、冬季は外出時にマフラーやマスクなどで防寒したり、衣類は圧迫感や締め付け感のないものを選んだりすることで予防できることを伝えます1, 3)。また、日常生活でできるケアとして、マッサージや運動などによる血液循環の改善があります4)。
二次障害の予防
末梢神経障害には、二次障害として、感覚障害によるやけどや包丁などによる創傷、筋力低下や感覚性運動失調による転倒などがあります1)。これらを予防するには、患者さんのセルフケアが重要となります5)。
風呂場で滑らないようにラバーマットを敷くことや、湯呑みではなく取手付きのマグカップにするなど、患者さんの症状と生活の状況を確認して具体的な提案をするよう心掛けます5)。洋服のボタン掛けや、字を書きにくいか、つまずきやすくなっていないかといった日常生活の様子をアセスメントし、“どのようにすればできるようになるのか”、といった視点で対策を考えるとともに、今後はこれまで以上に時間がかかるようになることを説明し、患者さんの理解を促すことも必要になります3,5)。
末梢神経障害によって細かな作業が難しくなることが多くあります。患者さんの生活状況を聞きながら、安全に快適に生活できるような工夫を患者さんと一緒に探していくことが大切になります4)。
セルフケア支援5)
末梢神経障害には確立された対処方法がないため、セルフケア能力の高い患者さんでも支援が必要となる可能性があります。患者さんが生活上での困りごとに自分で気付き、対策を立てることが必要となります。末梢神経障害は慢性的に日常生活に影響を及ぼすこともあるため、家族の協力が得られるのか、ソーシャルサポートが利用できるのかということも確認するとよいでしょう。
資料
1) 岡崎早苗. がん看護 2020;25(2):180-183.
2) 伊藤奈央. がん看護 2020;25(1):77-80.
3) 秋吉由利子. 消化器ナーシング 2021;26(9):858-862.
4) 山本瀬奈. YORi-SOUがんナーシング 2020;10(6):599-602.
5) 田墨惠子. 看護技術 2017;63(7):714-718.