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検査・診断、治療や移植にかかわる
看護ケアのポイントや
患者さまの心のケアについて説明していきます。
先生からのメッセージは
現場の生のアドバイスをいただいています。

Contents 2-3

貧血

がん薬物療法による副作用に貧血があります。
貧血は緩徐に進行することが多く、長期的な視点で見ていく必要があります。
また、貧血は患者さんが症状に気づきにくい場合もあるため注意が必要です。
貧血による疲労や息切れ、めまい、ふらつきなどの症状は、生活の質(QOL)を低下させるため、
早期発見と症状を改善させるセルフケアができるような支援が大切です。

貧血の原因と症状1,2)

貧血とは、赤血球やヘモグロビン(Hb)値が減少している状態のことです。 がん薬物療法で発現する貧血の主な原因は、抗がん薬に由来するものとして、骨髄抑制で起こる赤血球産生の障害、産生された赤血球の破壊と亢進、血小板減少に伴う出血などがあります。また、がん疾患が原因で起こるものとしてがん細胞の骨髄浸潤やサイトカイン産生による赤血球の産生抑制、腫瘍からの出血などがあります。ほかにも、手術や低栄養により鉄やビタミンの欠乏によるものなど、さまざまな原因があります。

貧血の症状は、赤血球減少による酸素低下がもたらす疲労、めまい、ふらつき、動悸、労作時の息切れ、結膜や爪床などの蒼白、頭痛、低血圧などがあります。

貧血の発生頻度は抗がん薬の種類によって異なりますが、赤血球の寿命は約120日と長いため、多くの場合、治療開始から数週間あるいは数カ月にわたって、緩徐に進行します。

貧血への対処法

がん薬物療法による貧血に対する薬物療法は、ヘモグロビン(Hb)値7~8 g/dLで輸血療法が検討されます3)。出血による鉄欠乏性貧血に対しては、鉄剤が使われることもあります1)

Hb値と貧血症状にはある程度の相関があるので、患者さんの状態をよく観察して貧血の重症化を見逃さないことが重要です2)。また、有害事象共通用語規準(CTCAE v5.0)などを使って、貧血の程度を評価し、スタッフ間で共有しておくことも大切です。

表1 Hb 値と貧血症状

表2 貧血の程度

アセスメント

がん薬物療法により、貧血が起こる可能性があることを患者さんとご家族に伝え、注意が必要な時期や症状、症状が現れた際の対応策について、治療前に説明しておくことが大切です1)。自宅で貧血の症状を自覚した場合に、セルフケアができるように指導し、症状が出現したら、医療者に伝えてもらうようにします1)

がん薬物療法で貧血が起きた際のセルフケアは、生活の工夫と食事の工夫です。

生活の工夫

貧血の症状が出現したときは、安静にして過ごすことが大切です1,2)

めまいやふらつきの症状は転倒の危険があるので、安全のために急激な動きを避け、生活の動作をゆっくりと行うように指導します1,2)。例えば、ベッドから起き上がるときは、まず座った状態で、めまいなどの症状がないことを確認してから立ち上がるようにします1,2)

貧血では体全体の酸素が不足するため、手足の先の冷えやしびれなど、感覚異常が起こることがあるので、室温、寝具や衣類を調整するなど、保温に心掛けるようにします1,2)。血流をよくするために手浴、足浴なども勧めるとよいでしょう2)

皮膚や粘膜を清潔に保つことも大切です2)。貧血では免疫力が低下しているので、手洗い、うがいなどの感染防止を行うように伝えます。

排便時に力むと、出血や失神発作を起こすこともあるので、力まないように便秘予防も大切です2)

食事の工夫1,2)

食事は赤血球をつくるための重要な材料になりますので、1日3食規則正しく食べることが大切です。貧血では、特に赤血球の成分であるタンパク質が必要で、卵、肉類、魚介類、牛乳、乳製品、大豆など、タンパク質を多く含む食事を摂るように心掛けてもらいます。また、ヘモグロビンは鉄でできているので、レバー、かつお、ほうれん草、春菊、そば、ひじき、しじみなど、鉄分を多く含む食品を取り入れることも大切です。ほかにも、ビタミンC、ビタミンB12を含む食品の摂取も心掛けるよう伝えておきます。

資料

  1. 辻真梨亜. がん看護 2020;25(2):132-136.
  2. 並木佳世. プロフェッショナルがんナーシング 2014;4(4):354-364.
  3. 厚生労働省医薬・生活衛生局. 血液製剤の使用指針. 平成29年3月:7.
    (https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000161115.pdf)