検査・診断、治療や移植にかかわる
看護ケアのポイントや
患者さまの心のケアについて説明していきます。
先生からのメッセージは
現場の生のアドバイスをいただいています。
Contents 2-12
食欲不振
がん薬物療法中の食欲不振は、摂食量の減少が続くことで体力や体重の低下を引き起こし、
治療継続の困難さにつながるだけでなく、患者さんの治療意欲を奪うことにもなります1)。
また、体重減少そのものが生存期間の短縮につながることもあるので2)、
食欲不振の要因を把握して症状コントロールを行うことはとても重要です。
そのためには患者さんの思いをよく聞いて、症状を把握するアセスメントが求められます。
がん薬物療法中の食欲不振の要因
食欲不振の要因には、抗がん薬や放射線治療による悪心・嘔吐、味覚異常、口内炎などがあります。特に悪心・嘔吐は食欲不振の最も大きな要因となります1)。
アセスメント
モニタリング
食欲不振の原因となる症状には、悪心・嘔吐、味覚異常、口内炎以外にも胸焼け、膨満感、胃部不快感、便秘などの消化器症状があるので、これらの有無を観察することも重要です3)。
食欲不振の持続による栄養状態の悪化、免疫力の低下を防ぐためには、モニタリングと評価が重要です3)。具体的には、食事の摂取量と摂取内容からカロリーや水分摂取量、体重の変化がないかを観察し3)、有害事象共通用語規準(CTCAE v5.0)などで評価します。
表 食欲不振の客観的な評価
食事などの工夫
食欲不振時には、無理せずに食べられるときに食べられるだけの量をゆっくり食べるよう指導します1,3,4)。ご家族は「食べないと元気にならない」と考え、無理に勧めることもありますが、見守りが大切であることをご家族に伝えておくことが大切です4)。
また、本人に食べる意思がないときに食べるよう勧めても効果がないばかりか、拒絶や不安でさらに食欲低下を招く可能性があるので、注意が必要です4)。「少し食べられそう」という気持ちになったタイミングに介入することが効果的で、この時期を捉えるためには看護師、栄養士の連携が必要です4)。
症状が強いときは果物や飲み物、ゼリー類が好まれることもあります4)。食欲が増すように、盛り付けや皿など見た目にも工夫することが効果的な場合もあります4)。
摂食量が少ない場合は、経腸栄養剤を取り入れることも有効です4)。経腸栄養剤には、さまざまな味のものがあるので、患者さんが自分に合った味を選ぶことで長く続けられることにつながります4)。
食欲不振の対処法3)
食欲不振時や悪心には、消化管運動機能改善薬や消化器機能異常治療薬などの薬が使われることがあります。抗がん薬治療による食欲不振や倦怠感、不安に対して向精神薬が使われることもあります。
薬剤の治療、食事内容の変更等を行っても摂食量が改善せず、栄養状態が不良の場合は、栄養サポートチーム(NST)の介入を依頼することが検討されます。
資料