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検査・診断、治療や移植にかかわる
看護ケアのポイントや
患者さまの心のケアについて説明していきます。
先生からのメッセージは
現場の生のアドバイスをいただいています。

Contents 2-1

副作用の発現時期

がんと診断されたときから、患者さんは痛みや不安など、さまざまな苦痛を抱え、
それらは治療継続や日常生活に影響を及ぼします。
しかし、がんは診断から治療、治療後の維持期、終末期まで、経過がある程度予測しやすい病気なので、変化を時
間軸で捉え、経過を予測することにより、患者さんが安心して治療を継続できるよう支援することが大事です1)

がん薬物療法の副作用は薬の量や種類により経過が異なります。
どのような違いがあるのかを知ることで、アセスメントや患者さんのQOL維持に寄与することができます。

がん薬物療法の種類と副作用

血液がんの薬物療法に使用される主な薬剤には、細胞障害性抗がん薬、分子標的薬、腫瘍免疫療法などがあります2)

患者さんのQOL維持には、治療開始前から薬剤ごとに発現しやすい副作用に基づくアセスメントが重要です。そのためにはそれぞれの薬の作用機序や副作用について知っておくことが大切です。

細胞障害性抗がん薬
(殺細胞性の抗がん薬)の副作用

細胞障害性抗がん薬は、細胞が増殖するときの分裂細胞に作用し、さまざまな副作用が起こります。細胞障害性抗がん薬の副作用は、投与直後には悪心・嘔吐、投与後第3週あたりからは脱毛など、副作用の発現時期は図に示すように、ある程度予測することができます3)

図 細胞障害性抗がん薬の副作用と発現時期

図 細胞障害性抗がん薬の副作用と発現時期

分子標的薬の副作用

分子標的薬は、がん細胞の発生や増殖に関わるタンパク質などの分子を標的とする薬です。がん細胞の中に入り、細胞の増殖を阻害する「低分子医薬(キナーゼ阻害薬など)」と、がん細胞の表面に現れるタンパク質と結合あるいはがん細胞の周囲の環境に働きかけてがん細胞を攻撃する「抗体医薬」などに分けられます。

キナーゼ阻害薬の副作用は、下痢や悪心・嘔吐などの消化器症状、骨髄抑制、肝障害、貧血、日和見感染症、心房細動など多岐にわたります2) 。どの副作用がいつ出現しやすいかは薬ごとに異なります2)

抗体薬の副作用には、インフュージョンリアクションといって、インフルエンザのような高熱、関節痛、息苦しさなどの症状が、治療の初期に出現することがあります2)。腫瘍崩壊症候群も注意しておきたい副作用です。治療で腫瘍が急速に死滅するときに、電解質のバランスが崩れることなどが原因で発症します。通常、血液がんで使用される場合は、投与から数時間~数日で発症します4)

腫瘍免疫療法2)

腫瘍免疫療法とは、腫瘍細胞に対する患者さんの免疫反応を高めることにより、がんを治療する薬剤や治療法のことです。免疫チェックポイント阻害薬やCAR-T細胞療法があります。

免疫チェックポイント阻害薬に特有の副作用として、免疫関連有害事象があります。間質性肺疾患や大腸炎・重度の下痢、特発性血小板減少などがあり、治療開始後2~3ヵ月以内に生じる傾向があります。ただし、薬剤終了後や数ヵ月経過後に現れることもあります。

CAR-T細胞療法は、患者さんのT細胞を体外でがんを認識する遺伝子CARを導入して増殖させたのちに、患者さんの体に戻す治療法です。特有の副作用としてサイトカイン放出症候群(CRS)があり、CAR-T細胞輸注の数日後に発症することが多くあります。

アセスメント1)

がん治療の多くは外来で行われるようになり、以前であれば入院中に医師や看護師が対処していたことを、患者さんは自分で行わなければなりません。薬物療法は薬の種類や量、あるいは治療の目的が根治目的か延命目的かによっても、予測される経過や副作用は異なります。看護では、現在の治療の目的を理解してもらうこと、今必要なこと、この先に必要になることなどを、患者さんと話し合っておくことが大切です。

さらに、がん患者さんは、がんと診断されたときから、さまざまなストレスを抱えて暮らしています。体の変化だけでなく、抑うつや不安による食欲不振、不眠、集中力の低下など、心理面の変化にも気を配る必要があります。

資料

  1. 長﨑揚子. Expert Nurse 2022;38(4):86⁻91.
  2. 日本血液学会(編集). 血液専門医テキスト(改訂第3版). 南江堂. 96, 104-108, 116-120.
  3. 国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ
    (https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/
    drug_therapy/dt02.html)
    (2023年3月20日閲覧)
  4. 齋藤亜由美ほか. 治療 2021;103(10):1210-1215.