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検査・診断、治療や移植にかかわる
看護ケアのポイントや
患者さまの心のケアについて説明していきます。
先生からのメッセージは
現場の生のアドバイスをいただいています。

Contents 4-3

慢性GVHD

慢性移植片対宿主病(GVHD)は生命予後をも左右する造血幹細胞移植後の晩期合併症の1つです1~4)
本症は通常、外来通院中の患者さんに現れることが多く、
生活の質(QOL)の低下にもつながることから2)、看護師はGVHDの初期症状を早期に発見し、
適切な時期に治療が受けられるように支援していくことが求められます。

慢性GVHDとは

移植片対宿主病(GVHD)とは、造血幹細胞を移植されたドナーのリンパ球が患者さんの体を非自己と認識して攻撃することによる免疫反応疾患です3)

GVHDには急性と慢性があり、以前は造血幹細胞移植後100日以内の発症が急性GVHD、それ以降が慢性GVHDとされていましたが、現在はNIH基準により、「診断的徴候」、「特徴的徴候」、「他の徴候」、「共通徴候」の4種類の臨床徴候に分類され、「診断的徴候」が最低1つ、あるいは、生検や他の検査で支持される「特徴的徴候」が1つ以上で、他の疾患が除外される場合に慢性GVHDと診断されます1,2)

慢性GVHDの症状は多彩で、全身のどの臓器でも発症する可能性があります。 特に皮膚、口腔、眼、消化器、肝臓、肺、関節、生殖器等に多く、進行は緩やかですが、一部の臓器では不可逆性変化を伴います2,3)

慢性GVHDの治療2)

慢性GVHDの治療の目標は、GVHDによる症状の緩和、GVHDの活動性の制御、臓器障害と後遺症を予防することなどが挙げられます。また、がん治療に伴う副作用とのバランスを取ることも大切です。

慢性GVHDの看護ケア

慢性GVHDを発症すると日常生活に支障をきたし、患者さんのQOLが低下します2,4)。場合によっては不可逆的な変化を伴うこともあり、症状と共存することが必要となります4)。慢性GVHDでは、患者さんは毎日同じようにケアを行っていても、気候や体調により症状の増悪を繰り返すことがあります4)。また、患者さんが看護師の指示通りにケアを行っていても、症状が改善しないことにストレスを感じることも少なくありません4)

看護師は患者さんに寄り添いながら、患者さんやご家族が「努力によって、慢性GVHDの症状と上手に共存できていること」を前向きに捉えることができるように、ケアできていることについてフィードバックすることが大切です4)

皮膚2)

スキンケアの基本は清潔の保持、保湿、物理的・化学的刺激からの保護です。毎日の入浴やシャワー浴で清潔に保ち、入浴後は早めに保湿するように指導します。摩擦や締め付けのない衣類や靴を着用することで、物理的刺激を避けるようにします。
日光曝露は皮膚GVHDを悪化させる可能性があるため、日焼け止めクリーム(SPF20以上、PA+++以上)の低刺激タイプを使用します。移植後2年間は日光曝露対策を継続することが望ましいといえます。

口腔2)

GVHDにより唾液分泌機能などが損なわれることで、口腔内の自浄作用が低下している可能性があります。口腔内や歯牙・歯肉を清潔に保つことや、ブラッシングなどによる口腔ケアを継続するよう指導します。

唾液分泌の促進にはシュガーレスガムを噛んだり、唾液腺のマッサージも有効です。マスクの着用も口腔内の乾燥の緩和につながります。

2)

ドライアイに対する人工涙液や点眼液などを点眼する前は、手を洗い清潔にするよう指導します。また、蒸しタオルを眼周囲にあてて温めることで蒸気によるドライアイ症状の緩和が期待できます。眼周囲を温めた後に軽いマッサージを行うことも、血行促進につながります。

消化管2)

嚥下困難や食道狭窄などにより食事の摂取が困難な場合は、飲み物や汁物を準備し、交互に摂取するとよいでしょう。また、食材を刻んだりつぶしたり、ペースト状にするなどでとろみをつけるなどの工夫も有効です。

食欲不振が続くようであれば、食事の回数を増やしたり、栄養補助食品を活用したりするなどして、必要なカロリーを摂取するように心がけるよう伝えます。場合によっては、栄養士による栄養指導も考慮します。

資料

  1. 日本造血・免疫細胞療法学会ガイドライン委員会 GVHD(第 5 版)部会. 造血細胞移植ガイドライ
    ン GVHD(第 5 版).
    (https://www.jstct.or.jp/uploads/files/guideline/01_02_gvhd_ver05.1.pdf)
  2. 日本造血細胞移植学会(編集).「同種造血細胞移植後フォローアップ看護(改訂第2版)」 2019年. 南江堂. P94-93.
  3. 山田真由美. がん看護 2012;17(3):357-360.
  4. 本井多希. Hematology 2020;(2):87-91.