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検査・診断、治療や移植にかかわる
看護ケアのポイントや
患者さまの心のケアについて説明していきます。
先生からのメッセージは
現場の生のアドバイスをいただいています。

Contents 3-3

血栓性微小血管症(TMA)

血栓性微小血管障害症けっせんせいびしょうけっかんしょうがいしょう(TMA)は移植後に血管内皮が障害されることで、虚血性の臓器障害が認められる病態
をいいます。
TMAの治療法として確立したものはなく、血漿交換が行われることがあるものの、その効果は不明です1)
軽症例では無治療で軽快することもありますが、重症例は治療効果が得られにくく、
に合併したTMA患者の致死率は62.8%という報
告もあります2)


血栓性微小血管症(TMA)けっせんせいびしょうけっかんしょうがいしょうは移植後に血管内皮が障害されることで、虚血性の臓器障害が認められる病態
をいいます。
TMAの治療法として確立したものはなく、血漿交換が行われることがあるものの、その効果は不明です1)
軽症例では無治療で軽快することもありますが、重症例は治療効果が得られにくく、
に合併したTMA患者の致死率は62.8%という報
告もあります2)

*血管性微小血管障害. 河野文夫監修. 造血幹細胞移植の看護, 改訂第2版, 87.

TMAの発症要因

超大量化学療法やによる移植前処置、免疫抑制剤、GVHD、感染症、移植前処置に伴う肝障害が原因となります2)。予後因子として腎障害の有無があります1)

TMAの症状2)

主な症状として下痢や発熱、黄疸、中枢神経障害、下血などの微小血栓性溶びしょうけっせんせいよう血性貧血けつせいひんけつ、中枢神経障害、腎障害などの臓器障害による臨床症状がみられます。同時に急性GVHD、などを併存していることがあるため、これらの疾患の関与も考慮します。

主な症状として下痢や発熱、黄疸、中枢神経障害、下血などの微小血栓性溶びしょうけっせんせいよう血性貧血けつせいひんけつ、中枢神経障害、腎障害などの臓器障害による臨床症状がみられます。同時に急性GVHD、肝中などを併存していることがあるため、これらの疾患の関与も考慮します。

症状の観察2)

発熱、下血・下痢、黄疸、けいれん・神経症状、出血傾向、検査データを観察します。

看護2)

死亡率が高いので、全身状態の観察を密に行い、異常の早期発見に努めます。発熱が持続する場合は、解熱剤の投与に加え、鼠径部や腋窩部の冷罨法を行います。下痢や下血時は陰部の清潔や肛門部の観察、褥瘡予防を考慮します。

出血予防として、特に不穏時はベッドのサイドレールを柔らかいものでカバーするなどして外的刺激を少なくするようにします。
自力での日常生活が困難な場合には、ADLを援助します。

資料

  1. 日本造血・免疫細胞療法学会(編集). 造血細胞移植看護 基礎テキスト. 南江堂. 150-154.
  2. 河野文夫(監修). 造血幹細胞移植の看護(改訂第2
    版). 南江堂. 82-89.
  3. 日本造血・免疫細胞療法学会.
    造血細胞移植学会ガイドライン 第2巻. 13-14.
    (https://www.jstct.or.jp/uploads/files/guideline/
    06m_zenshochi.pdf)

看護師

医療法人 原三信病院
看護部 主任

横田 宜子 先生

ワンポイントアドバイス

- TMAの看護ケア -

TMAに対して看護師ができることは少ないのですが、出血への注意や、全身状態の確認、採血結果の確認などを行います。移植後にはTMAが現れる可能性があることを、常に頭の片隅に置いて看護に当たることが大切です。

- コミュニケーションのポイント -

TMAに限らず移植において、患者さんだけでなくご家族も日々の状況をとても心配しますので、その都度コミュニケーションを取るように心掛けます。

患者さんとご家族が面会できる状態であれば、ご家族に患者さんのその日の様子を伝えることは、コミュニケーションとしてとても重要だと思います。面会が難しい状態で、ご家族から電話で問い合わせがあれば、病室での様子を丁寧に話すようにしています。患者さんの病状の変化やご家族の不安が強いようであれば、医師から説明を受けるよう促します。

患者さんやご家族は、看護師に対して、些細なことまで気軽に話してくれることが多いと思います。患者さん・ご家族の不安や心配は看護師が相談に乗りますが、医師などの他職種の協力が必要であれば、橋渡しをするようにコミュニケーションを図ることも大切な役割です。

 

 

ドクター

医療法人 原三信病院
血液内科 主任部長

上村 智彦 先生

看護師さんへのメッセージ

- 合併症としてのTMA -

TMAの診断は難しく、常に感染症やGVHDなどと鑑別する必要があります。移植後の合併症にはGVHDや感染症など複数あり、実臨床ではそれらの病態はオーバーラップしていたり、複数の病態が発現していたりすることが多くあります。

鑑別が難しかったり、複雑な病態を呈していたりすることがあり、TMAはそのような病態の1つになります。つまり、TMAが突然、単独で発現することはまれで、GVHDの治療中、あるいはサイトメガロウイルス感染症の治療中などにTMAを合併することが多くあります2)
例えば、移植後のGVHD治療中に発現している症状が、実はTMAなどの違う疾患によるものである可能性も考えられるのです。看護師さんは、患者さんを「GVHDの治療中」と理解して観察するだけでなく、少しでも気になる変化があれば「これは本当にGVHDの症状なのか」といった視点で看護・観察が重要です。

- 気になる症状は医師に報告を -

全てを看護師さんが判断する必要はありませんが、TMAは皮膚GVHDのようにみてわかるというものではありません。ただし、移植後の状態の特徴を知り、時に短時間で変化する重大な合併症の可能性があるTMAでは「昨日までと違う」「さっきと違う」と気付くことが重要となり、気になる症状があれば医師に報告することが非常に大事だと思います。

- ご家族への対応 -

ご家族への説明という点では、患者さんの理解の状況を確認し、医師の診断がつくタイミングで、患者さんの抱える不安を伝えてもらい、医師からの少し詳しい説明をセッティングすることを看護師さんに期待しています。

最近は新型コロナウイルス感染症の影響もあり、移植病棟に看護師さんやご家族は入れません。病態の変化などの情報を患者さんだけではなくご家族にどのように届けるかということは特に重要な点であり、こちらから必要なアクセスをとることが求められていると思います。

特にこのコロナ禍においてもできるだけコミュニケーションをご家族とも取りつつ、必要な情報を共有することは重要で、ベッドサイドにいる看護師さんが院外のご家族との橋渡し役となることも期待しています。