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検査・診断、治療や移植にかかわる
看護ケアのポイントや
患者さまの心のケアについて説明していきます。
先生からのメッセージは
現場の生のアドバイスをいただいています。

Contents 2-21

スキンケア

がん薬物療法では皮膚障害が起こることがあり、精神的・社会的な苦痛も伴うため
生活の質(QOL)にも大きな影響を及ぼします。
また、皮膚障害の重症化は、がん薬物療法の延期や中止にもつながりかねません。
皮膚障害に対する有効な治療薬はないため、
早期発見と早期介入によるスキンケアが有効な治療法となります1)
丁寧な問診や視診を行い、皮膚症状やセルフケア能力のアセスメントをすることで、
患者さんが継続的に治療に向き合えるようにサポートすることが重要です。

スキンケアの三原則2,3)

スキンケアの支援の基本は、スキンケアの三原則である清潔・保湿・保護の3つの実行を促すことです。

清潔については、皮膚の汚れや塗布剤を洗い落とすことが目的となりますが、熱いお湯で洗うと皮膚の乾燥を招くため、ぬるま湯を使います。また、皮膚のバリア機能を低下させないために、タオルでゴシゴシと強くこすることは避けて、泡で優しく洗います。水分を拭き取る際もこすらずに、タオルを優しく押し当てるように伝えましょう。

保湿については、刺激となるアルコール含有の化粧水は避ける方が無難です。入浴後や手洗い後には皮膚のバリア機能が低下する一方、保湿剤が浸透しやすい状態となっているため、直後にたっぷりと塗布することが大切です。

保護については、摩擦など皮膚への直接的な刺激を避け、紫外線などから皮膚を守ることを目的とします。衣服で保護するほか、日傘や帽子、日焼け止めなども活用します。顔剃りや髭剃りではカミソリよりも電気シェーバーを使用し、皮膚を傷つけないように十分に注意します。剃り終わったら保湿クリームで肌を保護することも大切です。

また、皮膚表面のpHは5~6と弱酸性ですが、それと相違するものは、全てが化学的刺激となります。水様便や感染尿などの排泄物は、pH7以上となっていることが多くあります。腸内環境を整え、便のpHを弱酸性に近づける工夫も、化学的刺激から肛門周囲や陰部の皮膚を守るために役立ちます。

アセスメント4)

まずは皮膚症状を丁寧にアセスメントします。例えば、ざ瘡様皮疹が出現しやすい薬剤を投与していても、初期症状ではそう痒感が現れないこともあります。患者さんが気付きにくい背部などの好発部位は一緒に皮膚状態をチェックし、どの部位にどの程度の皮疹があるかを確認します。

顔面を中心とした皮膚障害は、社会生活に影響を及ぼすこともあり、患者さんの精神的な負担も大きくなります。スキンケアに対する意欲が低下していないかをアセスメントすることが重要です。

ほかにも、術後補助化学療法の影響で末梢神経障害を生じ、手のしびれなどが生じている場合、セルフケアに影響を及ぼす可能性もあります。スキンケアの三原則の実行に支障がないか、患者さんの状態を十分にチェックしましょう。

外用薬の使い方を指導2)

外用薬を使用する場合は、その種類と特徴、患者さんの皮膚状態を考慮し、効果的な使い方を伝えることが大切です。

保湿剤とステロイド軟膏など2種類以上の外用薬を使用する場合は、塗布方法やタイミングを指導します。炎症部位にステロイド軟膏を塗った後に保湿剤を使うと、ステロイド軟膏を広げてしまうので注意しなければなりません。一般的に、塗る面積の広い方から先に塗るよう伝えます。

ステロイド軟膏の塗布量は、大人の人差し指の先端から第一関節まで、口径5mmのチューブから押し出された量が1FTU=約0.5gとなり、この量を成人の手のひら2枚分に塗るよう指導します。

スキンケア支援とメンタルケア2,4)

入浴の回数や浴槽の温度の好み、保湿剤を使う習慣の有無、帽子や日焼け止めを使うことに抵抗はないかなど、スキンケアの三原則に沿って患者さんの生活習慣を確認することも、効率的なスキンケア支援につながります。
例えば、男性は女性よりもスキンケアの習慣がないことが多く、「しっかり塗りましょう」などの言葉のみでは伝わらない場合もあります。保湿剤は一度塗ってあげるなど、指導には工夫が必要です。

がん治療中の皮膚障害は、外見的な変化による自尊心の低下も起こりやすく、QOLの低下によってその人らしさを阻害し大きな苦痛を伴う場合があります。患者さんが抱えている症状や思いに耳を傾け、患者さんと伴走するようにスキンケア支援を行い、治療の継続を助けることが大切です。

資料

  1. 瀬尾卓司. がん看護 2018;23(7):663-665.
  2. 畠山明子. 看護技術 2022;68(2):134-139.
  3. 青木和恵. がん看護 2019;24(8):719-723.
  4. 淺野耕太. 看護技術 2022;68(2):140-143.