検査・診断、治療や移植にかかわる
看護ケアのポイントや
患者さまの心のケアについて説明していきます。
先生からのメッセージは
現場の生のアドバイスをいただいています。
Contents 4-5
食事栄養
がん患者さんは、がん自体あるいは、がん治療の影響により低栄養となり、
それが治療や生活の質(QOL)に影響することがあります1)。
がん治療においては、悪心・嘔吐、味覚障害、口腔粘膜炎や下痢、
食欲不振といった副作用症状を管理しながら、栄養管理をすることが大切になります2)。
入院から外来診療に切り替わる頃には、食事量が移植直後に比べて増加していても、
口腔内の粘膜炎や乾燥などがあると、食事に苦労したり、
偏った食事摂取が続く要因になったりもします3)。
また、低栄養による予後への悪影響や生活習慣病のリスクにもつながりかねません3)。
がん患者さんにとって適切な栄養管理は良好な臨床経過に有効です。
しかも、同時に患者さん自身で取り組むことができるうえに関心が高いのも食事です1)。
食べる喜びや自身の回復を実感してもらえるよう、
常に患者さんの視点に立ちながら適切に指導することが大切です。
生活環境をふまえたアセスメントを行う
低栄養や筋力の低下は転倒や転落にもつながることもあり、QOLにさまざまな悪影響を及ぼします。したがって、食事摂取量や検査データをしっかりと把握するだけでなく、患者さんの思いや自覚症状を丁寧に聞き取りながら、生活環境もふまえたアセスメントを行う必要があります2)。
栄養管理に影響するがん治療の副作用に、悪心・嘔吐、下痢、便秘、血小板減少などがあります1)。
食欲不振は、消化管機能の低下および食欲に関わる脳の視床下部への刺激の低下などによって生じることがあります1)。また、食卓やベッドの周囲などの生活環境が要因となる場合や、不安や抑うつによっても食欲不振が生じることがあります2)。
味覚障害の原因には、味覚伝達路の障害や味蕾機能の低下、食事摂取量の低下による亜鉛不足なども考えられます1)。
口腔ケアの重要性
口腔内の乾燥や汚れ、においといったことが食欲不振の原因となり、低栄養になることがあります2)。また、口腔内の炎症に伴い、食べ物をしっかりと咀嚼することができなかったり、嚥下困難感が生じたりすることによって食欲不振をきたすこともあるため、口腔内の環境を十分にチェックしながら、保湿効果の高いジェルなど口腔ケアのアイテムの使用を提案するなどして、食べる喜びを取り戻してもらえるよう支援します4)。
管理栄養士や栄養士との連携5)
退院時や外来へ移行した際に食事に対する不安がある場合には、管理栄養士や栄養士と連携して指導を行う方法もあります。
例えば、食事の内容や栄養状態の評価では、現在の食事内容において不足や過剰傾向のある栄養素を確認し、患者さんの従来の食行動からの栄養状態の推移の予想や対応策の評価を行います。食事量や栄養状態を適切に維持できるよう食事指導を行います。
退院後の指導3)
退院後に移植片対宿主病(GVHD)による口腔内や腸管障害が発現すると、それらに伴う味覚障害や食欲不振、下痢などの症状が発現することがあり、経口摂取による栄養補給が難しくなります。口内炎や下痢に対しては、薬物療法により症状の緩和ができることもありますが、味覚障害は個人差が大きいため、調味料の使い方や食材の選び方について、患者さんごとの食生活に合わせたアドバイスを行います。
退院後は、食べられる食材や量が増え、食事量が安定してきます。ただし、移植直後の食欲不振時には、食べられる物を食べられるだけ摂取しており、これが継続してしまうと、食事量と運動量のバランスが悪くなり生活習慣病のリスクとなります。食事量が安定してきたらバランスの良い食事を摂取し、生活習慣病の予防を心がけるよう指導しましょう。
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