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検査・診断、治療や移植にかかわる
看護ケアのポイントや
患者さまの心のケアについて説明していきます。
先生からのメッセージは
現場の生のアドバイスをいただいています。

Contents 1-3

骨髄検査

さまざまな血液疾患の診断目的や治療効果の判定、造血能の評価などにおいて必須となる検査が骨髄検査です。
骨髄検査には骨髄穿刺と骨髄生検があります。
骨髄検査は、正しく実施することで極めて重要な情報を得るこ
とができますが、侵襲性が高くリスクを伴うという側面もあります1)
骨髄検査は外来通院でも実施可能なため、帰宅後のケア方法など患者さんは不安を感じることが予想されます2)
検査の目的や注意事項を十分に理解した上で、患者さんに適切な情報を提供し、
検査後の様子も注意深く観察しながら精神面のサポートを行うことも大切です。

骨髄検査とは1)

骨髄検査には骨髄穿刺と骨髄生検があります。骨髄穿刺、骨髄生検ともに、骨髄内の血液や細胞などの組織を採り出し、形態や細胞数を調べる検査です。

骨髄穿刺

骨髄穿刺針を用いて、経皮的に針を骨髄に達するまで挿入し、骨髄内の血液を吸引採取します。

骨髄生検

骨髄穿刺針とは異なる専用針を用いて、骨髄組織の一部をそのまま採取します。骨髄穿刺で検体が採れなかった場合には積極的に行われます。

骨髄検査の目的3)

骨髄検査は血液がん(白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫)や、再生不良性貧血などの血液疾患の診断に有用な検査です。白血球数の増加や減少、貧血、末梢血への異常細胞の出現がある場合や、血液検査では分からない造血過程にある幼若血球の状態を調べるためにも行われます。また、疾患の治療経過の追跡や、悪性リンパ腫などの骨髄浸潤の精査においても役立ちます。

表 骨髄検査の目的・適応

表 骨髄検査の目的・適応

検査に関する
十分な情報提供を行う

骨髄検査は血液疾患の病態把握に役立つ検査ですが、侵襲性が高くリスクを伴う検査でもあります。患者さんには事前に検査の必要性を十分に説明し、いつでも補足説明を行うことができる準備を整えておくことが大切です3)

骨髄穿刺では、穿刺部位が胸骨なら胸が、腸骨ならお尻のあたりが引っ張られるような痛みが一時的に起こることや、骨髄生検では穿刺部位にぐりぐりとした重い感じがあることなども説明しておくとよいでしょう3)

通常は危険を伴う検査ではないものの、穿刺前に投与する局所麻酔薬によるショック、胸骨穿刺の場合はごくまれに気胸や大動脈損傷、出血性ショックがあることなど、起こり得る合併症と対処法についても説明しておきます1,3)

骨髄検査は外来通院でも実施できますが、その場合は帰宅後に看護師が創部の観察に介入することができないため、これが患者さんにとっての不安となることも考えられます2)。検査当日の入浴やシャワー浴はしないことや、ガーゼを交換する必要があること、検査終了後2~3日から1週間程度は穿刺部位に違和感が残る場合もあること、心配なことがあれば連絡するよう伝えるなど、いつくらいまで、どのようなことに気を付ければいいのかといったことをきめ細かに情報提供すると患者さんの安心につながります3)

検査のポイントと注意事項3)

検査時には患者さんの状態をよく観察し、特に穿刺部位からの出血には十分な注意が必要です。患者さんは出血性素因があることも多いため、止血を確実に行います。

検査後は仰臥位になり30分は安静を保ち、必ずバイタルサインを測定します。採取後の骨髄液は凝固しやすいため、穿刺を行う医師と看護師および臨床検査技師が連携を図り、迅速に検査を進めます。

患者さんの不安に
寄り添う看護の実践2)

骨髄検査を受ける前、患者さんは医師から悪性疾患の可能性も含めて説明を受けているので、ショック期であることが考えられます。そのため、医師から検査に関する詳しい説明を受けていても、内容を理解することが難しい可能性もあります。看護師はそのことを念頭に置き、医師のICに同席して患者さんの反応を確認しながら、補足説明や精神的サポートを行う役割を担うとよいでしょう。

検査後には、検査結果と今後の治療に対する不安にも介入することが求められます。悪性疾患が確定した場合にはショック期が長引くことも予想されるため、検査結果の説明の際には心理的負担を最小化できるよう、ご家族にも同席してもらうなど個々の患者さんにあった配慮をする必要があります。今後の治療選択についても、患者さんが納得して意思決定できるようきめ細かな情緒的な支援が不可欠です。

痛みなどの言語化されやすい訴えだけでなく、言語化されない不安にも寄り添い、骨髄検査前から介入することで、患者さんの心理的負担を可能な限り軽減するよう努めましょう。

資料

  1. 通山薫. 内科2020;126(4):699-703.
  2. 戸室淳美ほか. 第50回日本看護学会論文集 慢性期看護 2020;58-61.
  3. 町田郁代. がん看護 2009;14(2):105-109.

看護師

独立行政法人 国立病院機構 福岡東医療センター
看護部

森 香予 先生

ワンポイントアドバイス

- 検査について理解する -

骨髄検査では、局所麻酔時、穿刺時、骨髄液の吸引時の苦痛が大きく、中でも生検時には骨髄穿刺と生検で2回の穿刺が行われます。検査前に医師から説明を受けていても、患者さんが検査による不安や緊張で余裕がない状態になると、2回目の穿刺に驚くことがあります。介助に付く看護師は、患者さんがこのような精神状況になる可能性があると理解し対応することが望ましいでしょう。

- 検査時の看護における留意点 -

骨髄検査は侵襲性のある検査なので、患者さんが検査の目的を理解し、安心して受けていただけるような介助を心掛けています。また、医師がスムーズに検査を施行できるように、必要な物品を全てそろえ、先々を考えながら介助しています。

臨床検査技師と協力して実施することもあり、その際は自分の動きにも注意し、臨床検査技師が円滑に業務を行うことができるように配慮しています。

検査後の観察については、病棟であれば24時間体制の看護が可能なので、連携して穿刺部を確認でき、もし異常があれば医師に報告できます。ただし、外来での検査であれば患者さんは検査後に帰宅し、ご自身やご家族が観察することになります。

検査当日はシャワー浴や入浴を控えることや、出血傾向があれば枕子での圧迫時間や安静時間を医師に確認し患者さんに伝えます。また、足のしびれなどの症状が発現する可能性があること、またそのような症状が現れたら早めに医療機関に連絡するなど、帰宅後の症状や対応について具体的な情報を提供する必要があります。

- 安心につながるコミュニケーションを-

骨髄検査は痛みを伴いますので、検査前に麻酔の注射をすることを伝えて患者さんの安心につなげるようにしています。穿刺針は通常の注射針よりも太いので、「ゴリゴリ押される感じがすると思います」と事前に説明をします。患者さんによっては、逆に不安に感じることもあるようですが、「医師も看護師もいるので大丈夫ですよ」と声掛けをし、安心して検査を受けていただけるようにしています。

検査中は、体勢を維持する必要があるので、看護師からの声掛けに患者さんが反応して体勢を崩さないように声掛けのタイミングに注意しています。また、「検査は短時間なので動かないように同じ体勢でお願いしますね」と検査前に伝えたり、「一緒に頑張りましょう」と、できるだけ安心されるような声掛けを心掛けています。

ドクター

独立行政法人 国立病院機構 福岡東医療センター
血液内科 臨床研究部長

黒岩 三佳 先生

看護師さんへのメッセージ

-医師として患者さんに伝えること-

検査前に患者さんから「穿刺部の痛みはずっと続きますか」と聞かれることがあります。これは医師から説明する内容だと思いますが、患者さんには穿刺時に痛みが発生するので、針を刺す1回か2回は痛みを感じることを伝えます。また、局所麻酔をするので穿刺時の痛みは取れるものの、骨髄を吸引するときの痛みや違和感までは取れないことも説明しています。

- 検査時の介助について -

骨髄検査では合併症が起きた場合の対処も念頭に置いて準備しますので、手術と同様にとらえてもらうことが望ましいと思います。骨髄検査に限らず侵襲性の高い検査や手術では、シミュレーションを行ってから機器の配置や物品を準備すると、スムーズに実施できると思います。検査を手順良く実施すると短時間で終わるので、患者さんの負担軽減にもつながると思います。

看護師さんは手順も考えて物品をそろえ、予測できる合併症にも速やかに対応できるように予期しながら検査前の準備にあたってほしいと思います。

- 穿刺後の処置について -

骨髄検査の実施後は、穿刺部をガーゼで圧迫止血した後、枕子を乗せています。看護師さんには、穿刺後の処置が必要な理由や、枕子が用いられる理由、出血のサインがなくても止血が必要な理由、止血の処置が必要な期間は患者さんごとに異なることも理解してほしいと思います。

外来であれば、患者さんに止血の必要性や具体的な止血方法、いつまで止血が必要なのか、といった情報を看護師さんから伝えてほしいと思います。患者さんから「消毒はどうしたらいいですか」「枕子はいつまで使えばいいですか」という質問を受けることもあります。

帰宅した患者さんがご自身で翌日のガーゼ交換を確実に行えるように、具体的な交換方法だけでなく、入浴の可否やライフスタイルに関する注意点も看護師さんが理解して患者さんへ説明していただくと、帰宅後も安心して過ごせると思います。

- 患者さんの不安への対応 -

患者さんによっては検査に対する不安が強く、円滑に検査が進まないこともあります。検査に対する不安だけでなく、「がんかもしれない」という不安を持っていることもあります。患者さんの状況に合わせて、医師と看護師さんで臨機応変に対応することが大事です。

検査の意義について納得しない患者さんであれば、納得するまで説明するようにしています。患者さんごとの対応が必要だと思いますが、患者さんによっては対応が難しいこともあります。そのような場合は、自分たちだけで解決しようとせずに医師に相談することも考慮してほしいと思います。その連携が患者さんへの安心にもつながり、「看護師さんに言えば大丈夫」という信頼関係にもつながると思います。