検査・診断、治療や移植にかかわる
看護ケアのポイントや
患者さまの心のケアについて説明していきます。
先生からのメッセージは
現場の生のアドバイスをいただいています。
Contents 1-2
検査での注意点
血液がんには、診断のための検査とがん種ごとの病期分類のための検査が必要です。
検査の中には苦痛を伴うものも多いことや、血液検査を頻回に行うことなど、
患者さんの抱える苦痛や不安も大きくなります。
患者さんの抱える苦痛や不安を理解し、
検査の説明やきめ細やかな看護ケアを提供することが大切です。
血液がんが疑われる際の検査
血液疾患の確定診断のためには、臨床検査(血液検査、心電図、超音波など)、放射線・画像診断、骨髄検査(骨髄穿刺、リンパ節生検)、病理生検、内視鏡検査などが行われます1)。血液がんが疑われる場合には、フローサイトメトリー、染色体検査、遺伝子検査などが必要となります2)。
表 血液疾患確定診断までの検査項目
表 血液疾患確定診断までの検査項目
フローサイトメトリー2)
フローサイトメトリーは白血病やリンパ腫の診断に欠かせない検査の1つで、細胞の性質を調べるために行われる検査です。個々の細胞の表面に発現している抗原を抗体で染色し、フローサイトメーターという検査機器で抗原の発現状況を解析します。成熟する前の血球の表面に発現しているマーカーを調べることで骨髄性白血病とリンパ性白血病を鑑別することができます。
染色体検査2)
多くの血液がんにみられる特異的な染色体異常を調べる検査です。染色体の数や形を調べる検査で、分裂中期の細胞を使うGバンド分染法や、分裂間期の細胞でも検査可能なFISH法などがあります。
遺伝子検査2)
がんに特異的な遺伝子配列を調べる検査です。染色体異常では検出できないレベルの遺伝子異常も見つけることができます。
血液がんの病型診断/病期分類2)
血液がんでは、病型の診断や病期分類のための検査も必要です。
白血病
白血病は造血幹細胞になんらかの遺伝子異常が起き、その異常が起こった幹細胞に由来する腫瘍細胞が増殖します。白血病の多くは、骨髄や末梢血の特異的な形態により診断されます。ただし、詳細な病型を分類するためには、染色体検査、表面抗原検査、遺伝子検査などが行われます。
悪性リンパ腫
リンパ系のがんは種類が多く、発症メカニズム、経過、治療への反応性がまったく異なるため、治療法を決めるために病型分類を決定する必要があります。そのためにリンパ節生検や場合によっては消化管や皮膚などの生検標本による病理検査が必要です。
多発性骨髄腫
多発性骨髄腫の診断には、血中のMタンパク(異常免疫グロブリン)の存在の有無を調べることが必要です。そのための検査に血液および尿の免疫電気泳動法があります。また、骨髄で単クローン性形質細胞が増加していないか調べるための検査としてフローサイトメトリーなどが行われます。
検査における看護師の役割1)
血液がんの検査には骨髄検査のように、痛みや不安を伴う検査も多いので、検査前の説明、検査中の看護、検査後の観察と日常生活における注意点の指導が重要です。
検査の説明時には、患者さんの理解と状態の把握が重要です。また、付き添いのご家族がいる場合は、患者さんと一緒に説明を聞いていただき、患者さんへの協力支援をしてもらえるように努めます。
検査の説明用紙は、患者さんが理解しやすく、確実にセルフケアできる内容のものを検査部門の医師と看護師とともに作成することが望ましいでしょう。患者さんに説明する際には、患者さんと一緒に説明用紙を見て、患者さんの反応を確認しながら説明するようにします。大切なところは患者さんの注意を引くように、赤字や線、マークを付けたり、簡単な説明文を書き加えたりするなど、工夫することも大事です。
血液疾患の診断のためには、多くの種類の検査を受ける必要があるので、患者さんの日常生活の負担をできるだけ少なくするような検査スケジュールを調整することも必要です。そして、患者さんに安心して検査や治療を受けてもらえるように看護ケアを行うことが求められます。
資料
看護師
独立行政法人 国立病院機構 福岡東医療センター
看護部
森 香予 先生
ワンポイントアドバイス
- 検査時の看護-
診断から治療までを円滑に短期間で進めるために、入院後には採血や画像検査、骨髄検査といった検査だけでなく、歯科や消化器などの他科受診の指示が入る場合があります。ここで、患者さんの体調や負担になっていないか配慮し、スケジュール調整を行っています。また、血液検査は、患者さんの状態に加えて、疾患の状況や治療効果を把握する目的もあるため、採血量が多くなることもあります。採血量の多さに患者さんが不安を感じ、質問を受けることもありますが、目的と必要性を説明しています。
- 検査に対する患者さんの不安-
検査時には患者さんが漠然とした不安を抱いていることもありますので、その不安をできるだけ表出していただけるように、「何か気掛かりなことはありませんか」と声を掛けるようにしています。ご自宅から入院される場合は、「ご自宅での生活で困ったことはなかったですか」と聞くようにしています。また、入院時は、ご家族が一緒に来ることがあるので、ご家族から見た患者さんの状態や変化などを確認するように心掛けています。
- 検査項目を理解するために-
使用する薬物の種類が増え、検査結果に基づいて使用する薬物が決まることも多くあります。フローサイトメトリーや染色体検査、遺伝子検査などの検査を理解することは、診療において重要になっているように思います。検査の種類や、検査結果から得られる情報については、きちんと理解しておく必要があると思います。
独学で関連資料から勉強するという方法もあると思いますが、医師のICに同席すると、検査についての理解も深めることができると思います。患者さんの疾患と検査を関連付けて理解できますので、医師のICには積極的に同席させていただき、勉強するようにしています。
ドクター
独立行政法人 国立病院機構 福岡東医療センター
血液内科 臨床研究部長
黒岩 三佳 先生
看護師さんへのメッセージ
-検査の目的を理解する-
患者さんは、特に症状がないのに血液検査を頻回に実施されたり、発熱時には2ヵ所から採血されること3)など、検査に対して疑問に思うことがあると思います。ほかにも、治療中に起こる骨髄抑制や臓器障害、敗血症などを早期に診断するために検査が必要です。それぞれの検査の目的を患者さんだけでなく看護師さんにも理解してほしいと思います。看護師さんが検査の目的を理解することは、看護にも反映されると思います。
- 疾患説明でのポイント-
疾患の特徴を踏まえた情報提供が大切だと思います。疾患に関するパンフレットを渡して「ここに書いてありますよ」と伝えるだけでなく、悪性リンパ腫、白血病などの疾患ごとの特徴の部分に赤丸を付けるなどして、患者さんの疾患への理解が深まるような情報提供を心掛けてほしいと思います。
看護師さんから、このような対応をしてもらうと、患者さんも自分のことを気に掛けていることが伝わると思います。また、患者さんからの質問や困り事を伝えられた際には、回答するだけでなく、その具体的な内容を医師に伝えてもらうことで、医師も患者さんのことをより理解できますし、患者さんの不安軽減にもつながると思われます。
- 検査を学ぶ重要性-
フローサイトメトリーや染色体検査、遺伝子検査についての知識や情報をアップデートする必要があると思います。看護師さんとして長く勤務していると、学生時代に学んでいても忘れていることもあると思います。ご自分で勉強するのもよいのですが、ICに同席すると検査に関する情報が得られるので、看護に活かせることも多くなると思います。また、ICで得た情報をきっかけに、さらにテキストや関連情報を調べるとより理解が深まると思います。
IC にはできるだけ同席し、疾患や治療方法だけでなく検査についての理解を深め、患者さんからの質問や疑問にも答えられるようになっていただきたいと思います。