FL, MZL
濾胞性リンパ腫,辺縁帯リンパ腫

MM
多発性骨髄腫

CML
慢性骨髄性白血病

PTCL
末梢性T細胞リンパ腫

ATLL
成人T細胞白血病・リンパ腫

MDS
骨髄異形成症候群

PTCL治療のアルゴリズム

PTCL#の治療では、CHOP療法をはじめとする多剤併用化学療法の治療実績が多く報告されている。限局期では放射線療法の追加も選択できる1)
ALK陽性ALCLにおける標準的な初回治療は、IPI2(低中間リスク)以上ではブレンツキシマブベドチン(BV)併用CHP(BV-CHP)療法が、IP10〜1(低リスク)ではCHOP/CHOP類似療法が推奨されるが、BV-CHP療法も選択可能である。PTCL-NOS、AITL、ALK陰性ALCLにおいても、CD30陽性であれば、BV-CHP療法が推奨される。ただし、従来どおりCHOP療法やCHOP類似療法も選択できる。CD30陰性であれば、初回治療は、実績が多いCHOP療法やCHOP類似療法が推奨される。また、臨床試験への参加も推奨される。PTCLでは予後の改善を目指した新規治療薬、移植療法の臨床試験が多く実施されている。これらへの参加は重要な治療選択肢の1つである1)2)
造血幹細胞移植は、正常な造血幹細胞を移植して治療を行う方法である。主に、患者自身の細胞を使用する自家造血幹細胞移植と、他人の細胞を使用する同種造血幹細胞移植がある。通常、造血幹細胞移植は大量化学療法を組み合わせて行われる3)。なお、初回治療に引き続く(up-front)自家移植は現時点では推奨治療とはいえず、臨床試験として実施することが望ましい。化学療法後に再発した場合や難治性の場合には、自家及び同種の造血幹細胞移植が考慮される1)


# 造血器腫瘍診療ガイドラインでは、PTCLは、PTCL- NOS、AITL、ALK陽性ALCL、ALK陰性ALCLを対象として取り扱っている。本邦で頻度の高い成人T細胞白血病/リンパ腫と節外性NK/T細胞リンパ腫, 鼻型については別項で取り扱っている。皮膚T細胞リンパ腫に関しては、皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第3版 皮膚リンパ腫診療ガイドライン2020が作成されている。

救援療法

PTCLの救援療法では明確な標準療法がないため、さまざまなレジメンの中から選択される(表3)。

図3 

救援療法に用いられるレジメン例

造血幹細胞移植

造血器腫瘍の患者に対する造血幹細胞移植は、標準的な化学療法による予後が不良と予測される場合に予後を改善するために行われる。自家移植は大量化学療法による抗腫瘍効果を狙った治療であるが、治療関連死亡率が数パーセント未満と比較的安全な治療である一方、病型や患者の状態によっては移植後の再発が多い4)。 化学療法後CR例に対して地固め療法としての自家造血幹細胞移植を施行した報告では、3年全生存割合73%との良好な治療成績の報告5)があるが、一方で3-5年全生存割合が48-56%といった報告6)7)もあり、一致した見解は得られていない。そのため、一般診療として行うことは推奨されていない。

2010年以降に登場した治療薬

PTCLの初回治療では、主にCHOP療法に代表されるアントラサイクリン系薬剤を含む多剤併用療法が多く用いられるが、一部の病型を除いてその効果は不十分である場合もある。また、これらの治療に奏効しない患者や、治療後に再発又は病勢進行した患者では治療選択に関するエビデンスが不足している。
このような背景から、再発又は難治性のPTCLに対する新たな治療薬の開発が強く望まれていた。 近年、再発又は難治性のPTCLに対して抗CCR4モノクローナル抗体モガムリズマブ(遺伝子組換え)、微小管阻害薬結合抗CD30モノクローナル抗体ブレンツキシマブ ベドチン(遺伝子組換え)が承認され、さらにプリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)阻害剤フォロデシン、メトトレキサート類似の葉酸代謝拮抗剤プララトレキサート、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤ロミデプシン、ツシジノスタット#、インターロイキン-2(IL-2)とジフテリア毒素の部分配列からなる融合タンパク質デニロイキン ジフチトクス (遺伝子組換え) #、有機ヒ素製剤 ダリナパルシン が承認されるなど、治療選択肢に広がりがみられている(表4)。 治療選択肢が増えることは、患者にとっての希望となる。ただし、これら薬剤の使い分けや他剤との併用についてはまだ明確にされていないため、今後さまざまな比較試験等を行い、どの薬剤がどのような患者に有効であるかを示すエビデンスを蓄積していくことが重要な課題である。

# モガムリズマブ(遺伝子組換え)はCCR4陽性の成人T細胞白血病リンパ腫、再発又は難治性のCCR4陽性のPTCL、再発又は難治性の皮膚T細胞性リンパ腫、ブレンツキシマブ ベドチン(遺伝子組換え)はCD30陽性のホジキンリンパ腫、CD30陽性のPTCL、ツシジノスタットは再発又は難治性の成人T細胞白血病リンパ腫、再発又は難治性のPTCL、デニロイキン ジフチトクス(遺伝子組換え)は再発又は難治性のPTCL、再発又は難治性の皮膚T細胞性リンパ腫に対して承認されている。

図4 

近年承認されたPTCLに対する治療薬

  1. ^日本血液学会 編: 造血器腫瘍診療ガイドライン 2023年版, 金原出版, p315-324, 2023
  2. ^日本リンパ網内系学会 編: 若手医師のためのリンパ腫セミナー –エキスパートによる講義録, 南江堂, p101-109, 2012
  3. ^飛内賢正 監: 血液のがん 悪性リンパ腫・白血病・多発性骨髄腫, 講談社, p44-45, 2015
  4. ^菊池昌弘 他: 症例検討を通して学ぶ悪性リンパ腫診療の実際 -リンフォーマ井⼾端会議から学んだこと-, メディカルレビュー社,
    p71-75,2010
  5. ^Rodriguez J, et al.: Eur J Haematol. 2007; 79: 32-38
  6. ^Reimer P, et al.: J Clin Oncol. 2009; 27: 106-113
  7. ^d’Amore F, et al.: J Clin Oncol. 2012; 30: 3093-3099

2023年10月作成

承認番号:2017-JP-230000813