FL, MZL
濾胞性リンパ腫,辺縁帯リンパ腫

MM
多発性骨髄腫

CML
慢性骨髄性白血病

PTCL
末梢性T細胞リンパ腫

ATLL
成人T細胞白血病・リンパ腫

MDS
骨髄異形成症候群

MDSの病型分類

MDSの病態は多様であることから、血球減少・異形成の系統数やその性質、骨髄や末梢血での芽球比率、染色体異常などをもとに複数の病型に分類されている。病型により治療や予後が異なる場合があるため、病型分類は重要である。病型分類としては、MDSの概念提唱時から使用されてきたFAB(French-American-British)分類と、FAB分類を踏襲しつつその後の病態理解の進歩を反映したWHO分類がある1)。 MDSの疾患概念は1982年にFABグループより提唱され、同時に病型分類が示された。FAB分類では、MDSの疾患概念が形態学的異形成を共通の特徴としてまとめられ、急性骨髄性白血病(AML)との境界が定義された(芽球比率30%未満がMDS、30%以上がAML)。病型は、主に骨髄と末梢血における芽球比率の違いから、5つに分類されている(表1)2)

表1 

FABグループによるMDSの病型分類2)

WHO分類第5版の概要を紹介する論文によると、第5版では、疾患群の名称変更、病型区分における指標変更、芽球割合の違いを示す用語の追加、分類不能型MDSの削除などの変更が行われた3)4)

  • 疾患群の名称変更
    第4版の骨髄異形成症候群(MDS:myelodysplastic syndromes)から、第5版では骨髄異形成腫瘍(MDS:myelodysplastic neoplasms)へと変更された。

  • 病型区分における指標変更
    第4版では芽球割合、環状鉄芽球(RS)の割合、異形成の系統数といったリスクベースの病型区分に重点がおかれていたが、第5版では、遺伝子学的な定義に重点をおいた病型区分が行われた。

  • 芽球割合の違いを示す用語の追加
    第5版では低芽球性MDS(MDS-LB)と芽球増加を伴うMDS(MDS-IB)を区別する用語が明確化された。

  • 分類不能型MDSの削除
    第5版では分類不能型MDSのカテゴリーが削除された。

WHO分類第5版におけるMDSの病型区分と特徴の定義を表2に示す3)。MDSは遺伝子異常で定義されるMDSと形態異常で定義されるMDSの2つに大別され、芽球割合、染色体異常、遺伝子変異に基づいて分類される3)4)

表2

骨髄異形成腫瘍(MDS)の病型区分と特徴の定義3)

また、近年の造血器腫瘍の病態理解の進歩とWHO分類第4版で設定された分類を臨床で使用した経験、及び臨床試験の結果をもとに、疾患の診断や予後予測を簡便にすること、治療を改善すること、革新的な臨床試験の設計を可能にすることを目的として、WHOの分類とは別にまとめられた新たな分類として、国際コンセンサス分類(ICC)がある(表3)5)
ICCによるMDS及びMDS/AMLの病型区分は、骨髄又は末梢血中の芽球割合で大別され、遺伝子変異、染色体異常、異形成系統数によって分類される。
過剰に芽球が存在しない病型は遺伝子変異、染色体異常、異形成系統数に基づき、SF3B1変異を伴うMDS(MDS-SF3B1)、del(5q)を伴うMDS [MDS-del(5q)]、異形成を伴わないMDS,NOS、単一系統に異形成を有するMDS,NOS、多系統に異形成を有するMDS,NOSの5つとされた。一方、過剰に芽球が存在するMDSの病型はMDS-EBの1つであり、それよりも芽球割合が多い病型として、新たにMDS/AMLが導入された。

表3

骨髄異形成症候群(MDS)及び骨髄異形成症候群/急性骨髄性白血病(MDS/AML)5)

MDSのリスク分類

MDSの予後は、同じ病型でも患者によって異なることが知られており、各患者の予後リスクに応じた治療を実施することが重要である。 これまで、予後予測スコアリングシステムがいくつか提唱されている。現時点で、治療の層別化や臨床試験の組み入れ基準に広く用いられているのは、1997年に発表された国際予後スコアリングシステム(IPSS)6)や、染色体異常をより詳細に分類した改訂IPSS(IPSS-R:表4)7)である。そのほか、赤血球輸血依存性の重要性を盛り込んだWHO分類基準予後予測スコアリングシステム(WPSS)8)、二次性MDSや治療を受けた患者にも適用できるMD Andersonがんセンターの予後予測システム9)などがある。

表4

IPSS-RにおけるMDSの染色体リスク群7)

また、2022年、IPSS-RにMDS患者の遺伝子情報を組み込んだスコアリングシステムである「IPSS-M」が報告された10)
IPSS-Mには、臨床所見、染色体異常、遺伝子変異の3種類の因子が含まれ、予後リスクを6つに層別化する(図1) 10)。臨床所見はIPSS-Rの予後因子をほぼ流用しているものの、好中球数が因子から削除された。染色体異常はIPSS-Rと同様の染色体リスク群が採用された。遺伝子変異としては、主な因子として16遺伝子(17変数)が含まれ、中でもTP53multihitFLT3ITD+TKDMLLPTDには大きな重みづけが設定されるとともに、その他にも15遺伝子(1変数)がスコアに影響を及ぼす。
IPSS-Mリスクスコアでは、スコアが0の場合を平均的な患者 (すべての変数で平均値を持つ仮想患者) と設定しており、スコアがー1の場合はリスクが2分の1に、スコアが1の場合はリスクが2倍に、スコアが2の場合はリスクが4倍になるように設定された。このスコアに基づいて、IPSS-Mによるリスク分類は、VH(非常に高い)、H(高い)、MH(中程度に高い)、ML(中程度に低い)、L(低い)、VL(非常に低い)の6段階とされた。
本分類については、web上にIPSS-M Risk Calculator11)があり、検査結果や染色体異常の有無、因子に含まれる遺伝子情報を入力することで、IPSS-Mリスクスコアのグラフ上にリスクカテゴリーや無白血病生存期間(LFS)、全生存期間(OS)、AMLへの形質転換に関する予測値が示されるようになっている。

図1

IPSS-Mに含まれる因子及びリスク群10)

MDSのリスク分類別の予後

予後予測スコアリングシステムは、治療の層別化に用いられる。一般に、急性骨髄性白血病(AML)への移行リスクが低いと考えられる低リスク群と、血球減少やAML移行のリスクが高いと考えられる高リスク群に層別化されるが、IPSSではLow及びInt-1リスクの患者を低リスク群、Int-2及びHighリスクの患者を高リスク群として分けることが有用とされる6)。IPSS-RではVery low及びLowリスクの患者を低リスク群、High及びVery highリスクの患者を高リスク群とし、Intermediateの患者についてはその他のリスク因子も含めて判断する7)

また、IPSS-Mについては6つのリスク群別に患者予後が示されている(図2)10)。リスク群別にLFS及びOSを評価した結果、LFS、OSともにリスク群による分類が確認され(いずれもp<0.0001、log-rank検定)、IPSS-Mによるリスク分類の有用性が示された。

図2

IPSS-Mのリスク群別の患者予後10)

  1. 金倉譲 総編集: プリンシプル血液疾患の臨床 ここまできた白血病/MDS治療, 中山書店, p28-38, 2013
  2. Bennett JM, et al.: Br J Haematol. 1982; 51: 189-199.
  3. Khoury JD, et al.: Leukemia. 2022; 36: 1703-1719.
  4. 通山薫: モダンメディア. 2022; 68: 390-394.
  5. Arber DA, et al.: Blood. 2022; 140: 1200-1228.
  6. Greenberg P, et al.: Blood. 1997; 89: 2079-2088.
  7. Greenberg PL, et al.: Blood. 2012; 120: 2454-2465.
  8. Malcovati L, et al.: J Clin Oncol. 2007; 25: 3503-3510.
  9. Kantarjian H, et al.: Cancer. 2008; 113: 1351-1361.
  10. Bernard E, et al.: NEJM Evid. 2022: Online ahead of print.
  11. IPSS-M Risk Calculator(https://mds-risk-model.com/)(2023年2月閲覧)

文献7,10)の研究は、米国Celgene社(Bristol-Myers Squibbの関係会社)からの支援を受けて実施されており、著者らに米国Celgene社(Bristol-Myers Squibbの関係会社)及びBristol-Myers Squibbから指導料などの謝金を受領したものを含む。