FL, MZL
濾胞性リンパ腫,辺縁帯リンパ腫

MM
多発性骨髄腫

CML
慢性骨髄性白血病

PTCL
末梢性T細胞リンパ腫

ATLL
成人T細胞白血病・リンパ腫

MDS
骨髄異形成症候群

ATLLの治療指針

ATLLの治療は臨床病型分類を重視し、患者年齢や全身状態に基づいて決定される。日本血液学会による造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版補訂版において、インドレントATLL(くすぶり型および予後不良因子を有さない慢性型)に対しては、アグレッシブATLLに進展するまで無治療経過観察が推奨される。一方、アグレッシブATLL(急性型、リンパ腫型、予後不良因子を有する慢性型)に対しては、多剤併用化学療法の施行が推奨される。化学療法に反応し、年齢・全身状態・主要臓器機能に問題がなく、適切なドナーが見つかった場合には、同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)を検討する1)

インドレントATLLの治療

無治療経過観察

インドレントATLLに対する化学療法は生存期間の延長につながらないと考えられており1)、急性転化まで無治療経過観察が推奨される。しかし、インドレントATLLにおいても増悪後の予後は不良であり1)、治療戦略の開発が必要とされている。

皮膚病変に対する治療

インドレントATLLのうち、皮膚病変がある患者には、症状緩和のため副腎皮質ステロイド剤の外用療法、PUVA療法などの紫外線療法、放射線療法、インターフェロン−γ療法などが行われる。治療効果が不十分な場合は、単剤化学療法を検討する2)

アグレッシブATLLの治療:多剤併用化学療法

造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版補訂版(日本血液学会編)では、アグレッシブATLLに対して以下の治療法が推奨されている1)

・初発アグレッシブATLLには多剤併用化学療法のVCAP-AMP-VECP(modified LSG15)療法が最も推奨される。(推奨グレード:カテゴリー 1)

・初回治療に反応したアグレッシブATLLには、 同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)が推奨される。(推奨グレード:カテゴリー 2A)

・再発・難治アグレッシブATLLには、allo-HSCTが一部に長期生存をもたらす。また、モガムリズマブとレナリドミドは、それぞれ単剤で比較的高い奏効割合を示す。(推奨グレード:カテゴリー 2B)

VCAP-AMP-VECP療法

8種類の抗がん剤を組み合わせた、多剤併用化学療法の中で最も推奨される治療法(図1)。日本臨床腫瘍研究グループのリンパ腫グループ(JCOG-LSG)により実施された、シタラビン、メトトレキサート、プレドニゾロンの髄腔内投与を追加したVCAP-AMP-VECP(mLSG15)療法と、同じく髄腔内投与を追加したCHOP-14(mLSG19)療法の第Ⅲ相比較試験(JCOG9801)において、有用性が認められている。mLSG15療法はmLSG19療法と比較して、毒性は強いもののCR率は有意に高く、OSとPFSを延長する傾向が示されたため、mLSG15療法がアグレッシブATLLの標準治療と位置付けられた3)。ただし、本試験の対象患者は70歳未満であり、高齢者への適用の可能性に関しては不明である。実臨床においては、高齢者を中心にCHOP療法が汎用されている。

図1 

mLSG15(VCAP-AMP-VECP)療法

CHOP/CHOP-14(biweekly- CHOP; bi-CHOP)療法

CHOP療法は、非ホジキンリンパ腫に対する化学療法として広く用いられるレジメンである。CHOP(CHOP-21)療法が21日/サイクルであるのに対し、CHOP-14(bi-CHOP)療法は14日/サイクルで実施される(図2)。

図2 

CHOP療法

高齢患者における治療

高齢ATLL患者では、規定通りの投与量による多剤併用化学療法は困難であるため、減量して行われることが多い4)。また、エトポシドやソブゾキサンなどの単剤療法や併用療法などが治療選択肢となる。

アグレッシブATLLの治療:同種造血幹細胞移植

初回治療寛解例に対する同種造血幹細胞移植

初回治療に反応したアグレッシブATLLに対しては、同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)が長期生存を期待できる治療法として推奨される1)。ATL-Prognostic Index(ATL-PI)プロジェクトにおいて、allo-HSCTを施行された急性型およびリンパ腫型ATLL患者214例の生存期間中央値(MST)は5.9ヵ月、4年OSは26%であった(図3A)。しかし、移植後のMSTは移植前のATLLのコントロール状況によって大きく異なり、初回寛解例以外では予後不良であった(図3B)5)。そのため、ATLLに対する初回治療に反応し、全身状態良好で、ドナーが存在する患者には積極的にallo-HSCTを考慮する。ただし、allo-HSCTは移植片対宿主病(Graft-versus-Host Disease; GvHD)や感染症などによる治療関連死亡が少なくないため、患者への十分な情報提供が必要である1)

図3 

allo-HSCTを施行された急性型およびリンパ腫型のATLL患者におけるOS5)

骨髄破壊的前処置と非破壊的前処置

ATLLの発症年齢は高く、骨髄破壊的前処置(Myeloablative Conditioning; MAC)によるallo-HSCTの適応から外れる患者が多い。しかし、骨髄非破壊的前処置(Reduced Intensity Conditioning;RIC)によるallo-HSCTにおいても、MACによるallo-HSCTと遜色ない治療成績が得られるようになってきた。 前処置は年齢で分けることが一般的であり、概ねMACの対象年齢の上限は55歳、RICの対象年齢は50~70歳(非血縁の場合は65歳まで)とされている1)。大規模な後方視的調査により、MAC群とRIC群の生命予後は同等であることが報告されている6)

ATLLの治療薬

近年、ATLLに対する治療薬の開発が進められている。ATLL患者の90%以上で発現するケモカイン受容体CCR4を標的としたヒト化モノクローナル抗体であるモガムリズマブが、2012年5月にCCR4陽性の再発・難治性ATLLに対して承認され、初発アグレッシブATLLに対しても2014年12月にmLSG15療法との併用試験の結果をもとに承認された。また、2017年3月には免疫調節薬であるレナリドミド、2021年6月にはHDAC阻害剤であるツシジノスタット、2022年9月にはEZH1/2阻害薬のバレメトスタットが、再発又は難治性ATLLに対して承認されている。このほか、新規治療薬の臨床試験が進行中であり、高齢患者においても寛解率の向上を目指すことができる治療法の開発が期待される。

図4 

ATLLに対する治療薬

  1. 日本血液学会編. 造血器腫瘍診療ガイドライン 2018年版補訂版. 金原出版, 2020.
  2. 菅谷誠 他. 日本皮膚科学会雑誌. 2012; 122: 1513-1531.
  3. Tsukasaki K, et al. J Clin Oncol. 2007; 25: 5458-5464.
  4. Katsuya H, et al. Blood. 2015; 126: 2570-2577.
  5. Makiyama J, et al. Int J Hematol. 2014; 100: 464-472.
  6. Ishida T, et al. Blood. 2012; 120: 1734-1741.