FL, MZL
濾胞性リンパ腫,辺縁帯リンパ腫

MM
多発性骨髄腫

CML
慢性骨髄性白血病

PTCL
末梢性T細胞リンパ腫

ATLL
成人T細胞白血病・リンパ腫

MDS
骨髄異形成症候群

MDSを疑う契機と診断の流れ

MDSの初発症状は血球減少によるものが多く、貧血による顔色不良、息切れ、動悸、全身倦怠感、点状出血斑やくり返す鼻血などの出血症状、感染症による発熱などがみられるが、患者によって症状のあらわれ方は異なる。また、無症状で健康診断の血液検査で血球減少などの異常が指摘され発見されることも多い1)。1系統のみの血球減少の場合もあるが、特に高齢者の貧血(正球性または軽度の大球性)で2系統以上の血球減少が認められる場合にはMDSの可能性が疑われる。 その他の検査所見では、LDHの上昇、血清フェリチン高値がみられることが多い。ハプトグロブリンの低下、間接ビリルビンの軽度上昇、エリスロポエチン高値などがみられることもあるが、MDSに特異的な生化学的所見は特に存在しない2)。MDSの診断はWHO分類(2017)に基づき、血球減少、末梢血と骨髄の芽球割合、造血細胞の異形成、染色体異常によってなされ、一部ではFAB分類による診断も参考とされている。MDSは他の血液疾患と境界を接しており、経過観察や他疾患の除外とともに、現在も診断の重要な部分は形態学的な判断に負うところが大きい3)。NCCNガイドラインでは初回評価項目として、赤血球中葉酸値や血清ビタミンB12、甲状腺刺激ホルモン、血清鉄、総鉄結合能(TIBC)なども推奨されている4)

MDSと鑑別すべき疾患と病態

MDSと鑑別すべき疾患には、慢性の血球減少を呈し、反応性の形態異常を起こすさまざまな疾患があり、感染性疾患(結核、感染性心内膜炎、HIV感染など)、炎症性疾患(全身性エリテマトーデス、サルコイドーシス、炎症性腸疾患など)、アルコール過剰摂取、薬剤性血球減少症(抗結核薬など)、栄養障害(銅欠乏、葉酸欠乏など)、肝疾患のほか、先天性の造血異常、悪性貧血、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫、血球貪食症候群などの3造血器疾患がある(表1)5)
MDSの診断時には、これらの病歴の聴取と身体所見、検査所見の検討により慎重に鑑別する必要がある5)。また、一部の疾患(ICUSやIDUS、CHIP、CCUS、特発性血小板減少性紫斑病、原発性骨髄線維症など)との鑑別では経過観察が必要となる5)

表1

MDSと鑑別すべき疾患と病態5)

  1. 骨髄異形成症候群の診断基準と診療の参照ガイド改訂版作成のためのワーキンググループ: 骨髄異形成症候群診療の参照ガイド 令和1年改訂版, p26, 2020
  2. 岡田定 編: レジデントのための血液診療の鉄則, 医学書院, p47,48, 2014
  3. 日本血液学会編: 造血器腫瘍診療ガイドライン 2018年版補訂版, 金原出版, p144-164, 2020
  4. NCCN Guidelines Version 3.2021 Myelodysplastic Syndromes
  5. 骨髄異形成症候群の診断基準と診療の参照ガイド改訂版作成のためのワーキンググループ: 骨髄異形成症候群診療の参照ガイド 令和1年改訂版, 2020