今回は、岡山大学血液・腫瘍・呼吸器内科の前田嘉信先生に、大学のスキ-部の思い出や内科 に進むことになった不思議な縁、留学して知った日本人とアメリカ人の差、その教訓に基づく 後輩へのメッセ-ジなどをうかがいました。



理論物理か、医学か

小さいころはどんなお子さんでしたか。好きだったテレビ番組や本などはありますか。

前田

「まんが偉人物語」というテレビ番組がとても好きでした。1話15分の2本立てで、キュリー夫人や野口英世など、歴史上の人物の伝記をドラマチックに紹介する番組です。僕は特に科学者とか、サイエンス系に興味がありましたね。

ひょっとして、家にある時計を壊したりしていませんでしたか。

前田

そうですね。男の子はよくやると思うのですが、モノをつくったり、修理と称して分解したりしていました。壊す方が多かったかもしれませんが(笑)。

子供の頃から算数や理科が好きで、特に算数はよくできましたね。小学生は勉強すればしただけよくできるようになるんです。中学の受験勉強が功を奏したのでしょうか、算数は問題を見た瞬間に答えがわかるようになっていましたよ。高校時代は「大学への数学」という月刊誌を購読していて、

じっくり考えて「あ、そうか」とひらめく瞬間が楽しかったです。昔から考えることが好きみたいですね。アインシュタインが部屋から一歩も出ずに、1日中考えていたといいますが、そういうのに惹かれます。小学生のときは内向的で、部屋の中でずっと考えている子でした。

理科は生物よりも物理が好きでした。それで、中学、高校時代は小説などはあまり読まず、ブルーバックス(自然科学の話を一般読者向けに解説した新書)をよく読んでいました。アインシュタインの相対性理論や量子力学なんかが面白かったですね。だから、大学は理論物理のほうに進もうと思っていたのです。

でも、医学のほうに進まれた。理論物理ではなく、医学の道に進むことになったきっかけは何だったのですか。

前田

理論物理をやるなら京大の理学部に行くのがよいのですが、能力が足りないと判断し、職業としてやっていくのも容易ではないだろうと思ったので、それなら医師かなあと漠然と思ったのです。両親は医師ではありませんが、親戚に医師が多かったので身近だったのと、「ブラック・ジャック」を読んでいて、白衣を着た医師のイメージもよかったので、高校2年のときに理論物理から医学部へ進路を変更したわけです。