患者さんと同じ方向を向いて病気と闘う

血液内科の魅力を教えてください。

松村

血液内科の魅力は、治療を最後まで全部自分でやれること。半年とか1年、患者さんと二人三脚で頑張って、そして、現時点では、がんを薬だけで治せるのは血液内科だけです。

死に直面した患者さんを助けると言っても、ERのような救急とはまたちょっと違うわけですね。

松村

患者さんとコミュニケーションをとりながら、一緒にじっくりと病気と闘えるのは血液内科のいいところだと思います。その時に、患者さんと向かい合うのではなくて、一緒に同じ方向を目指す姿勢が大事だと思っています。患者さんに感情移入し過ぎるとダメですが、患者さんをヒトとして愛する気持ちが大切です。

難しいですね。感情移入はしないけれども、愛するというのは。

松村

だから「思いやりがないと医者じゃない」という気はします。それが必須だと思います。

思い出に残る患者さんは、いらっしゃいますか。

松村

ええ。研修医を終わって伊丹市民病院にいた時に、15歳の急性リンパ性白血病の患者さんを初めて受け持ちました。その患者さんは、治療がうまくいって、完全寛解に入りました。ただ、そこの病院では移植できなくて、兵庫医科大学に移植をお願いしました。10年程してからですけれど、社会人になったその患者さんが、「先生がここの病院で外来しているのを知ったので」と、わざわざ来てくれたんです。その時は、「ああ、この仕事していてよかった」と思いました。

医者冥利に尽きる話ですね。

松村

でも心残りがあるんです。命は助けたけれど、おそらく子供は作れなかったんじゃないかなと。今みたいに精子保存をしなかった時代でしたから。そのことを思うと、医学は随分進歩しましたね。

先生の患者さんへの愛は、お部屋に飾っておられる色紙の言葉とも重なりますね。

松村

はい。「天を敬い、人を愛し、医に生きる」という言葉です。これは近畿大学の塩﨑 均学長の言葉です。近大に赴任した時にお願いして、色紙に書いていただきました。私が、学生や後輩に贈りたい言葉、座右の銘ですね。「驕るな」ということだと思います。「天」いうか、たぶんどこかで「誰か」が自分を見ている。それは、自分の知っている亡くなった家人かもしれないし、もっと先祖かもしれません。そういった人たちがあって、今の自分があるんですよね。その人たちに恥ずかしくないように毎日を生きなくてはいけないと私は思っています。


いろいろなお話を、ありがとうございました。