負けん気が強いから、常にベスト

先生はご専門以外の領域も非常によく勉強されますよね。婦人科がんのことを勉強されて座長をしていただいたこともありました。

松村

私は血液内科を専門にしていますが、腫瘍内科の先生に「自分たちは幅広くがんを診れるけど、血液内科医は血液のがんしか診られない」と思われたくないんです。がんをすべて診れるけど、他のがんには興味ないから、血液疾患しか診ていない、という立ち位置でいたいんです。
それと、すべての仕事にベストを尽くしたい。婦人科に素人では恥ずかしくて座長はできないじゃないですか。それに、演者に失礼ですし、場合によっては馬鹿にされます。だから、今のガイドラインではどうなのかなど、前の晩に勉強し直したんだと思います。たとえば何かの冊子を監修する時も、渡された原稿を本気で直します。私の名前が入る限りいい加減なものは作れません。それに、十分な余裕のある期限をもらっても、できるかぎり早く返します。それでないと、次に仕事を頼まれません。どんな仕事でも依頼したヒトに「また頼みたい」という形で終わらせたいと思っています。

先生は常にベストを尽くそうとされるんですね。

松村

そうしたいと常に思って頑張りますが、最近はなかなか実行できていないのを実感しています。そういえば、うちの医局員が、赤司浩一先生に私のことを「負けん気が強い」と言いつけたらしいですよ。

赤司先生は「松村先生は負けん気が強い」と、以前からおっしゃっていましたよ。赤司先生と松村先生を一緒にお招きして講演していただいたとき、松村先生の講演を聞いて、「どれだけ力を入れているんだ、どれだけ負けん気が強いんだ」と。

松村

それはやっぱり、赤司先生に馬鹿にされたくないと思ったからでしょ。だけど、赤司先生とは本当に気が合います。最近も学会を抜けて2人で日帰り旅行をしましたし、パリの街で何時間もお茶してたこともあります。

先生はすべての仕事を、誰に見せても自分がやった仕事として恥ずかしくないものにしたいと思われているのですね。

松村

依頼原稿は、概ね月に2本ぐらい頼まれます。最近は僕の名前は最後に置いていますが、ほとんど自分で書いています。さっきも言いましたけど、自分の名前が入っているものはたとえ依頼原稿であっても納得のいくものでないといけません。だから自分で書いています。

先生はなぜ、そんなに頑張るのでしょう?

松村

気が小さくて、人からどう見られているのかが、すごく気になるからでしょうね。他人から「できない」とか「使えない」と思われたくない。だから頑張るんだと思います。

松村先生はお見かけする印象とギャップがあります。誰にでもフランクに接しられますので。

松村

フランクかどうかはわかりませんが。。。

飄々としていらっしゃるから。いったい、いつ論文を読まれているのだろうと思います。講演のたびに常に新しいデータを入れてくださいます。

松村

そうでないと依頼した方に失礼だと思っています。それと、サービス精神の現れかなと思います。

松村先生が最大限の努力をされているのを、おそらくほとんどの先生はご存知ないですよね。先生は忙しいところをお見せにならないから。

松村

「忙しい」とは絶対に言いません。言ったら負けだと思っています。それは、「自分の限界はここまでです」と言うのと同じですから。私が処理できる仕事の量は無限だと示したいと思っています。しかし、実際には無限ではないので、アポを取る時間もなくなり、今日も秘書さんに叱られました(泣)。

どこかでポロッと出るようなことはないのですか。

松村

医局員には絶対言いませんね。そんなぶざまな姿を見せられません。私がすごく頭がよかったり、業績があれば医局員はそれでついてきてくれると思いますが、そうではないので、教授はこれだけの量の仕事ができるんだということを見せることでしか、ついてきてくれないと思っています。それと、仕事を依頼してくるヒトにも言いません。ただ、気を許している本当の友達、赤司先生なんかには時々「もうあかん……」って(笑)。