ひとり占めせず、分け与えるべし

音楽がお好きと聞いていますが、お好きなジャンルは何ですか?

高折

音楽は何でも聴きます。ジャズはマイルス・デイヴィスとか、ジョン・コルトレーンとか、ビル・エバンスとか…。
ロックだと、僕はプログレが好きなので。キング・クリムゾンとか、ロキシー・ミュージックとか、デヴィッド・ボウイとかはコンサートも観にいきましたけどね。
留学時代はサンフランシスコでクリムゾンを観にいきました。後輩が訪ねてきたときにサンフランシスコのクラブでたまたまイギー・ポップ(アメリカのロック歌手)のライブをやっていて、後輩を連れて聴きにいきました。 僕は聴く専門ですね。500枚ぐらいレコードを持っていますが、ほとんどロック、プログレです。

クリムゾンのレコードは同じものを何枚も持っているんですよ、オリジナル版とか。僕の知り合いがそれを見て狂喜乱舞して、「先生、写真撮るから、これ持って」って、並んで写真を撮ったり…。昔はヨーロッパ版とアメリカ版で音が違うかとあったりしましたから。だから全部持っているんですよ。

ワインもお好きなのですよね? きっかけを教えてください。

高折

ワインに心酔したきっかけは、1992年に結婚式を挙げたプリンスホテルのソムリエと、披露宴でワインは何を出すかという話になったときです。そのときにいろいろ聞いて、いろんなワインを試飲して、そのままワインが好きになった。それまでは全く興味なかったんだけどね。

お好きな産地や種類は?

高折

僕はフランスワインが好きですね。赤が好き。

ワインのどこが好きなのでしょう。

高折

僕は薀蓄とかは大っ嫌いなんです。おいしいかおいしくないかだけ。なめし革のような味とか言われても、なめし革を舐めたことないからわからない。僕は飲むのが好きなのと、あとは思い入れです。
ワインはみんなで飲むときに思い入れができるからいいよね。僕が持っているワインというのは、ほとんど、息子と娘の生まれ年と、かみさんと僕の生まれ年のワインばっかりなんです。
たとえば大学院生の論文がNatureの姉妹誌に出たときなど、良い論文が出たら、良いワインを開けて、みんなで飲む。そのとき、ラベルに記念のコメントを書くんですよ。これは実を言うと本庶佑先生のまねなんですけどね。本庶先生が、AID(activation-induced cytidine deaminase)を発見されたときに、いいワインを開けて、Science誌にこういうふうに書かれたんです。「本庶がAIDを見つけたときに開けたワイン」と。
それで、必ず学生が学位をとって卒業するときに、うちに呼んでワインを開けるんです。
ワインは基本的にみんなで飲まないとだめ。貴重なワインというのはひとりで飲んでいたって意味がないので、何かの機会に開けるようにしています。

先生はおいしいワインは「みんなで」と思われているのですね。

高折

何事につけ、僕はひとり占めしちゃいけないと思っているんですよ。
僕が研究を始めた当時、テクニック、つまり新しい実験技術とかは、一子相伝だったんですよ。それができた人は弟子ひとりにしか教えなかったんですよ。当時のラボはね。
だから、僕は、テクニックは絶対に独占しちゃだめだと。僕は大学院生に必ず、「テクニックは所詮テクニックだから、自分はこれができるんだったら、どんどん人に教えろ」と、今でも言うんですけどね。
でも、みんな、なかなか今でもできないみたいですね。やっぱり自分が苦労して何かできるようになったら、絶対に人に教えない。みんな了見が狭い(笑)。