学生たちの力で、先生嫌いから愛される先生へ

小松先生がやらないといけないことをずっとやってきて、それをまわりの人が評価をしているのではありませんか?

小松

それは僕にはわかりません。ただ与えられたことは120%やろうということでやってきたことは事実なので、どれも手を抜かずにやってきました。臨床もやりましたし、研究もやりましたし、学生教育もやりました。

僕が学生教育の中で一番うれしかった思い出があります。2003年度卒業の6年生からメールがきて、謝恩会に出てくれと言われました。「おまえたち、どうせ胴上げして、人を落とすんだろう。そういうの、俺はいやだよ」と言ったら、「いや、先生、そういうのではなくて、いい話、名誉のある話ですから」と言われたんです。

名誉のある話ってなんだろうなと思いながら、謝恩会に出たんですよね。そうしたら、突然、学生が僕を壇上にあげました。僕はクルズスというミニレクチャーを、臨床実習で回ってくる学生などに対して行っていました。自治医科大学の学生はひとをのせるのがうまいんです。だいたい1時間の予定でやるのですが、調子にのって、1時間半は必ずやってしまう。そうすると学生がすごく喜んで、僕を評価してくれていたんですね。「先生をミスタークルズスとして表彰したい」と言って、表彰状とネクタイと花束をくれたんですよ。このネクタイがブタの尻尾柄。実はこれは僕がクルズスで、発作性夜間血色素尿症という病気のPIG-A遺伝子を覚えるのに、「ブタAと覚えろ」と言ったかららしいんですね。いろいろ工夫したことが印象的だったらしくてね。

学生からの評価はうれしいですね。

小松

ええ。自治医科大学は学生教育を熱心にやっているベスト3を表彰していて、僕は毎年上位に名前が上がっていたらしいんですけど、山梨大学に行くことが決まっていた2004年に、僕が表彰の対象者として名前が上がりました。去る者に今さら…という意見もあったようですが、「今までの学生教育に対する姿勢を評価したものであり、表彰すべきだ」となり、「最優秀教員賞」をいただきました。僕にとっては大変な名誉で、とても励みになりました。僕は学校の先生は嫌いだったのにね。

先生が大嫌いだった小松少年が、いつの間にかみんなに好かれる小松教授になったんですね。

小松

世の中はわからない、計算どおりにならないですね。

いつから教えることが面白くなってきたんですか。

小松

学生のおかげでしょうか。授業やクルズスが終わると「先生、今日の授業、すごくよかったです」とか、「質問があるんですけれども」とか言って寄って来てくれたんです。それで調子にのって、「じゃあ、次はこんなことやってみよう」とか、「こんな工夫をしてみよう」とか思うわけです。自分が学生を教育したというよりは、学生が教員を育てたと思っています。一方的に先生がただ教え、学生は教えられるんじゃなくて、実は、きちんとした教員を育てようと思ったら、学生の責任も大きいかなと思いますね。学生がいやな顔せずに授業を聞いてくれて、クルズスなんかも時間が延びちゃっても、時計を見るとかもせずに熱心に聞いてくれたので、それが自分にとってはよかったのかなあと思いますね。もしそうじゃなくて、誰も聞いてくれなかったら、テンションが下がりますよね。

先生が嫌いと言いながら、先生だったお母様の姿を見て学ばれていたのでは?

小松

僕が母に「いやあ、学校の先生にはなるまいと思っていたけど、なんでこうなっちゃったんだろうなあ」と言うと、母はニコッとしていますけどね。母も「数学の試験は私のクラスがいちばんよかった」とか自慢しています。