CMLセミナー

Operational cure as a real and practical goal of CML therapy in 2019

Dennis Kim 先生

Leukemia Program, Princess Margaret Cancer Centre, University of Toronto, Toronto, Canada

慢性骨髄性白血病(CML)は,t(9;22)(q34;q11)より形成されるフィラデルフィア(Ph)染色体を特徴とする白血病で,Ph染色体上のBCR-ABL1融合遺伝子にコードされて産生されるBCR-ABL1チロシンキナーゼが恒常的に活性化することで白血病細胞の増殖に関与する1)

CML化学療法の変遷を辿ると,1960年代の化学療法ではブスルファン,ヒドロキシウレアが主に使用されていたが,診断後5~7年くらいで移行期/急性転化(AP/BP)期へと病期が進行する場合が多かった2)。1980年代に入ると,インターフェロン-α(IFN-α)が使用されるようになり,2001年にチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)であるイマチニブが登場するまでは,造血幹細胞移植が施行できない患者に有用な薬剤として用いられた3)。現在は,BCR-ABL1チロシンキナーゼを選択的に阻害するTKIが,米国のNCCNガイドライン,欧州のESMO実臨床ガイドライン,日本の造血器腫瘍診療ガイドラインなどでCML治療の第一選択薬として推奨されている4-6)。そして,CMLの1st line治療には第1世代イマチニブ,第2世代ニロチニブ,ダサチニブが,2nd line治療以降では前者3剤を含め,第2世代ボスチニブ,第3世代ポナチニブが使用可能であり,CMLの治療成績は向上した5)

TKI治療により,CML患者のなかにはBCR-ABL1転写物が検出限界以下となり,それを維持し続ける患者もいる7)。真の治癒とは,白血病幹細胞を含むすべての残存白血病細胞が体内から完全に除去されることであり,これを達成できればCMLは完治したことになる。これが理想的ではあるが,数年間にわたってBCR-ABL1転写物が検出限界以下かごく低レベルに抑えられた状態を,operational cure,functional cure[実践的(機能的)治癒]と呼ぶようになり,治療しなくても再発せずにその状態を維持することを無治療寛解(treatment-free remission: TFR)と呼ぶようになった。そして,TFRに関連する臨床試験が行われるようになってきた。

このTFRの考え方は,フランスのMahonらがすでにIFN-α治療の時代から提唱していた8)。ただし,この当時はIFN-α治療によりCCyRを達成した患者をTFRとみなし,IFN-α治療を中断しCCyRを維持できるかどうかを臨床試験で検討した。その結果,治療中断後,中央値36ヵ月でのTFR維持率は47%(15例中7例)であった8)

TKI治療の時代に入り,最初のTKI治療中断試験を実施したのもMahonらのグループであった。彼らは,イマチニブ治療により2年以上CMR(MR4.5)を維持した患者100例でTKI治療を中断し,CMR逸脱を治療再開と定義しTFR維持を評価した。その結果,12ヵ月後に69例がCMRを維持しており,1年TFR維持率は41%であった9)。その後,TKI治療に関するさまざまな治療中断試験が実施されてきた10)

そして我々は,カナダで最初のTKI中断試験であるTRAD(treatment-free remission accomplished with dasatinib)注)試験を開始した11)。本試験では,131例(年齢中央値61歳)のCML-CP患者を対象に,1st lineイマチニブ治療後のTKI治療中断試験によるTFR維持と,初回治療中断後の再発例に対する2nd lineダサチニブ治療によりMR4.5を再達成し維持した患者で再度TKI治療を中断し,2回目のTFR維持を検討している。本試験の中間成績については,随時ASHやEHAなどの国際学会で発表しているが,最終成績を報告するにはいましばらく時間が必要である。

なお,米国NCCNガイドラインでは,TKI治療中断は基本的には臨床試験(臨床試験に相当する状況)で行うべきものであり,TKI治療中断により重大な有害事象が発現する可能性,AP/BP期に移行する可能性,治療再開後3ヵ月以内にMMRを達成できない可能性があることを話し合ったうえで,同意が得られた患者でのみ実施すべきであると勧告している5)。TKI治療は,安易に中断すべきものではないことを肝に銘じてほしい。

注)本邦におけるダサチニブの「効能又は効果」は,「1. 慢性骨髄性白血病,2. 再発又は難治性のフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病」です。また,ダサチニブの「用法及び用量」は,「1. 慢性骨髄性白血病 (1)慢性期:通常,成人にはダサチニブとして1日1回100 mgを経口投与する。なお,患者の状態により適宜増減するが,1日1回140 mgまで増量できる。(2)移行期又は急性期:通常,成人にはダサチニブとして1回70 mgを1日2回経口投与する。なお,患者の状態により適宜増減するが,1回90 mgを1日2回まで増量できる。2. 再発又は難治性のフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病:通常,成人にはダサチニブとして1回70 mgを1日2回経口投与する。なお,患者の状態により適宜増減するが,1回90 mgを1日2回まで増量できる」です。

【参考文献】

  1. Arber DA, et al. WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues, Swerdlow SH, et al. eds. IARC 2017; 16-27.
  2. Hehlmann R. Best Pract Res Clin Haematol 2009; 2: 283-284.
  3. Hehlmann R, et al. Blood 1994; 84: 4064-4077.
  4. 日本血液学会編. 造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版. 金原出版.
  5. NCCN Guidelines Version 2.2020. Chronic Myeloid Leukemia . https://www.nccn.org/professionals/physician_gls/PDF/cml.pdf(2019.10.4)
  6. Hochhaus A, et al. Ann Oncol 2017; 28(suppl 4): iv41-iv51.
  7. Mahon FX, et al. Ann Hematol 2015; 94(Suppl 2): S187-193.
  8. Mahon FX, et al. J Clin Oncol 2002; 20: 214-220.
  9. Mahon FX, et al. Lancet Oncol 2010; 11: 1029-1035.
  10. Rea D, et al. Blood 2017; 129: 846-854.
  11. Clinicaltrial.gov (NCT02268370)