一般講演2-1

Anti-tumor activity of CAR-T cells targeting the intracellular oncoprotein WT1 can be enhanced by vaccination1)

赤堀 泰 先生

三重大学大学院医学系研究科 複合的がん免疫療法センター

近年,キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞療法への期待が高まっているが,細胞表面抗原のうち真にがん細胞特異的でCARによる治療標的となりうるものは少なく(抗体治療法の標的になってきたがん抗原は正常組織にも発現しており,感度の高いCAR治療では重篤な有害事象が生じる),CAR-T細胞療法の開発を困難なものにしている。一方,細胞内には多種多様ながん特異的分子が存在し,それらがペプチドMHC複合体(peptide MHC complex, pMHC複合体)としてがん細胞表面に提示される。我々はそれを標的とするCARを作製できないかと考え,pMHC複合体を標的として認識しがん抑制を行うことのできるCAR-T細胞治療システムを開発したのであるが1),単なる輸注療法では生体内で輸注細胞の活性が維持されず,がん抑制作用が不十分であることが判明した。したがって,pMHC CAR治療法を開発するには輸注細胞の免疫増強法の開発が必要であった1)

こうした研究課題について,Wilms腫瘍遺伝子1(WT1)タンパク質由来のペプチドとHLA-A*24:02より構成されるpMHC複合体を認識するCARをテストケースとしてその可能性を検討した。WT1は腫瘍形成性の細胞内転写因子であり,白血病や種々の固形がんで過剰発現する一方,正常組織では発現レベルが低く,がん免疫療法における重要な標的の1つである。

本研究では,WT1235-243HLA-A*24:02複合体に特異的な単鎖可変領域(scFv)からなるCAR-T細胞を作製した。このCAR-T細胞はHLA-A*24:02陽性かつWT1陽性の細胞を認識して傷害した(図1)1)。その効果は,K562-A24皮下注NOGマウスモデルにおいても示され,抗原を負荷した樹状細胞(DC)ワクチンにより増強された(図2)1)。この効果の増強は,少なくとも一部はCAR-T細胞の増幅および活性化を介するものであった。また,MESO-4皮下注NOGマウスモデルに対しても同様の効果を示した1)

安全なCARを作製するには,基本的に近似配列の少ないペプチドを選択し,認識に必要な配列の多い抗体を取得することが必要である。それによってCAR-T細胞が認識できる標的を目的のがん抗原のみに限定することができ,有害事象の発生を抑制することが可能となる。そうして得られたpMHC複合体標的CAR-T細胞の有効性はDCワクチンによって増強しうることが示唆され,固形がんへの応用が期待される。

【参考文献】

  1. Akahori Y, et al. Blood 2018; 132: 1134-1145.

図1 WT1 CAR-T細胞はHLA-A*24:02陽性かつWT1陽性の細胞を認識して傷害した

図2 WT1236YパルスDCワクチンによる抗腫瘍効果