一般講演2-2

Notch-mediated induction of stem cell memory phenotype for CAR-T therapy1)

-機能的なT細胞の誘導とがん免疫療法への応用-

近藤 泰介 先生

慶應義塾大学医学部 微生物学・免疫学教室

腫瘍浸潤リンパ球(TIL)療法やキメラ型抗原受容体発現T細胞(CAR-T)療法をはじめとするT細胞移入療法は,画期的ながん治療法として注目されている。2017年には,がん患者に対する細胞・遺伝子療法としてのCAR-T療法が,米国食品医薬品局(FDA)により初めて承認された1)。 しかしながら,T細胞はがん患者に移入後すぐに疲弊し,体内から消失してしまうため,治療効果が持続しないという問題点を抱えている。

これに対して,ステムセルメモリーT(TSCM)細胞は,長寿でかつ増殖能力の高いメモリーT細胞の幹細胞である。TSCMの細胞移入療法への応用は治療効果の持続が期待できる。我々は,マウスおよびヒトの活性化T細胞を,Notchリガンドを発現するストローマ細胞と共培養することによって,TSCM様細胞を誘導する方法を開発し,このNotch誘導性TSCM細胞(iTSCM)のT細胞移入療法への応用を試みた
(図1)
2)

マウスで誘導された腫瘍特異的iTSCMに関する実験において,チェックポイント分子の発現消失,生体内での細胞増殖,マウス体内での継代の可能性および抗腫瘍効果が観察された3)。次に,ヒトT細胞を用いてiTSCMを作製した(図2)。このEpstein-Barrウイルス(EBV)特異的iTSCMは,EBV形質転換-腫瘍モデルマウスにおいて,従来の活性化T細胞より有意な細胞増殖能力およびLCL(lymphoblast B cell line)に対する抗腫瘍効果を示した(p<0.05,p<0.01,one-way ANOVA,log-rank検定)3)

これらの研究知見から,CAR-T細胞の“iTSCM化”はCAR-T療法の治療効果を向上させる有用な方法である可能性が考えられ,さらに現在CAR-T療法への応用研究を進めており,その成果を順次発表する予定である。

【参考文献】

  1. https://www.fda.gov/drugs/informationondrugs
    /approveddrugs/ucm574154.htm
    (2019.4.15)
  2. Kondo T, et al. Notch-mediated conversion of activated T cells into stem cell memory-like T cells for adoptive immunotherapy. Nat Commun 2017; 8: 15338. doi: 10.1038/ncomms15338.
  3. Kondo T, et al. Cancer Sci 2018; 109: 2130-2140.

図1 NotchリガンドOP9-mDLL1との共培養はin vitroにおいてマウスiTSCMを誘導する

図2 OP9-hDLL1との共培養はin vitroにおいてヒトiTSCMを誘導する