一般講演2-1

Recurrent SPl1 (PU.1) fusions in high-risk pediatric T cell acute
lymphoblastic leukemia1)

木村 俊介 先生

東京大学医学部附属病院 小児科

(筆頭著者:関 正史 先生 Department of Cell and Molecular Biology,Karolinska Institutet, Stockholm, Sweden)

 

小児T細胞性急性リンパ性白血病(T-ALL)に関しては,近年,薬物療法を中心とした集学的治療の強化により,全体として約7~8割の患者で治癒が期待できるようになってきた。しかしながら,成長障害や臓器機能障害,不妊などの治療後の晩期障害が課題である。また,約2~3割の治療抵抗性例や再発例は予後が極めて不良であり,その遺伝学的基盤はまだ十分には解明されていない。

そこで我々は,小児T-ALL患者121例において,トランスクリプトーム解析およびALLに関連した158の遺伝子・領域に対する変異解析(ターゲットキャプチャー解析)による包括的プロファイリングを行い,遺伝学的基盤の全体像の解明を試みた。

その結果,血球の分化において重要な転写因子であるPU.1をコードするSPI1遺伝子の新規融合遺伝子(STMN1-SPI1およびTCF7-SPI1)を複数例で同定した(図1)1)

このSPI1融合遺伝子を有する患者は,解析対象の3.9%(181例中7例)に認められ,その予後は極めて不良であった1)。また,SPI1融合遺伝子例はCD4-CD8-(double negative)またはCD4-CD8+(single negative)の免疫表現型を呈しており,commitmentやβ-selectionなどのT細胞の分化の過程において重要な役割を果たす遺伝子の発現プロファイルや遺伝子変異プロファイルが既知のT-ALLにおけるプロファイル(ETP,TAL1-RA,TAL1-RB,TLX-relatedの4群)とは異なっていた(図2)1)。つまり,SPI1融合遺伝子例のみで形成される独立した新たな一群であることが判明した。

また興味深いことに,SPI1(PU.1)融合タンパクは,PU.1の転写因子としての機能を保持しており,強制的にマウスの造血幹/前駆細胞において恒常的に発現させると,細胞増殖を誘導し,T細胞の分化停止を引き起こした1)

今回の研究から,ハイリスクの小児T-ALLにおけるSPI1融合遺伝子の独特の機序が明らかになった。この成果は,T-ALLの予後予測,高精度の分子診断の開発に貢献し,治療の個別化・最適化に役立つ可能性が示唆された。

【参考文献】

  1. Seki M, Kimura S, et al. Nat Genet 2017; 49: 1274-1281.

図1 新規SOI1(PU.1)融合遺伝子の同定

図2 T-ALLの5群の遺伝子変異プロファイル