一般講演1-2

Overcoming mutational complexity in acute myeloid leukemia by inhibition of critical pathways1)

髙木 伸介 先生

国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 血液内科

(筆頭著者:齊藤頼子 先生 理化学研究所 生命医科学研究センター ヒト疾患モデル研究チーム)

 

 

急性骨髄性白血病(AML)の発症には,複数の遺伝子異常が関与している。興味深いことにそれらの遺伝子異常の一部は健常人にも存在することがあるがその意義は明らかではない。このようなAML発症に至らない遺伝子異常を有する細胞群を“preleukemic clone”として捉え, 今回我々は白血病幹細胞とpreleukemic cloneの識別を試みた。その結果,NSGマウスを用いたxenograft modelで,FLT3-ITD変異陽性AML患者の骨髄・末梢血中に存在するpreleukemic cloneおよび白血病幹細胞を同定した1)。次に,single-cell DNAシークエンス解析によりclone構造を明らかにし,遺伝子変異をin vivoでの細胞運命と関連づけたところ,AML発症に至らず正常造血を許容する遺伝子変異(permissive mutations)とAML発症を決定づける遺伝子変異(leukemogenic mutations)が明らかになった (図1)1)

しかし実際には,一つのAML細胞が同時に複数の遺伝子変異を有するため,これに対する治療戦略を考える必要がある。まず,leukemogenic mutationであるFLT3-ITD mutationに由来する異常な細胞増殖シグナルを低分子化合物RK-20449で阻害したところ,AML細胞がin vivoで死滅した。さらに,細胞生存に必須で抗アポトーシスに働くBcl-2も同時に阻害することでRK-20449単剤に対しては治療抵抗性だったAML細胞も死滅した(図2)1)

このように,発癌と細胞生存に重要なpathwaysを同時に阻害することは,多様な遺伝子変異を有する悪性腫瘍を克服するための有効な治療戦略になる可能性がある。また,single-cell genomicsと患者サンプルを用いたxenograft modelを組み合わせたこのアプローチは,個別の治療標的の同定や新規薬剤の開発に幅広く応用できる可能性が示唆された。

【参考文献】

  1. Saito Y, Takagi S, et al. Sci Transl Med 2017; 9: e1214.

図1 Permissive mutationsとleukemogenic mutations

図2 発癌(FLT3-ITD)と細胞生存(Bcl-2)を同時に標的とした併用療法