多発性骨髄腫セミナー

実臨床から考えるエロツズマブの位置づけ

平松 靖史 先生

姫路赤十字病院 血液・腫瘍内科

多発性骨髄腫(MM)に対する治療については,近年,わが国でも海外とほぼ同時期に新規治療薬が承認され,臨床応用が可能となってきた。現在,従来の化学療法薬と副腎皮質ホルモン製剤に加えて,免疫調節薬(IMiDs)やプロテアソーム阻害剤,ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤,抗体薬など,さまざまな新規薬剤が臨床治療に導入されている(1)。本日のテーマであるエロツズマブは,日本で最初に承認された再発・難治性MM(RRMM)に対する抗体薬である。

MM治療は基本的には,まず移植適応の有無を判断し,それに応じたくすぶり型から初発MM,RRMMと薬物療法を考慮し,病期に即して薬剤の組み合わせを選択していくことになる1)

MMの年齢階級別罹患数をみると,2011年度の統計では68歳以上が約8割を占め,治療奏効で長期生存が得られるようになったが2),その医療費負担や認知症などの加齢に伴う疾患への対応,介護の問題なども大きな課題となってきた3)。ただし,部位別予測がん罹患数をみると,2015年版の「がんの統計」ではMMの罹患数は1%程度である4)

エロツズマブは,SLAMF7(signaling lymphocyte activation molecule family member 7)に結合する遺伝子組み換えヒト化IgG1モノクローナル抗体であり,NK細胞に発現するSLAMF7に結合して,細胞内のEAT-2のシグナル伝達を介してNK細胞を直接的に活性化する5,6)。また一方,骨髄腫細胞膜上のSLAMF7に結合して,NK細胞との相互作用である抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性を誘導することにより,腫瘍増殖抑制作用を及ぼすと考えられている5,6)

NK細胞は,体内のがんに対する防御の前線であり,MMに対する免疫応答において,重要な役割を担う可能性がある(図2) 6-9)。ただし,MMの病勢が進行すると,NK細胞が減少し,細胞傷害活性も低下する7)

ELOQUENT-2試験は,RRMMに対するIMiDのレナリドミドと低用量デキサメタゾン(Ld)療法にエロツズマブを加えた3剤併用(ELd)療法の有効性を,Ld療法群325例とELd群321例で比較・検討した。主要評価項目はPFS,ORRであった。本試験における2年間の追跡成績では,ELd群の2年PFSが41%,Ld群では27%であった10)。安全性については,いずれかの群で30%以上に発現した有害事象(全Grade)として,貧血(ELd群42.6%,Ld群39.8%),好中球減少症(それぞれ37.8%,33.7%),下痢(42.3%,33.7%),疲労(32.9%,30.6%)があった10)。2017年の欧州血液学会(EHA)では,その4年追跡データが発表されている。

今後,エロツズマブをはじめとする新規MM治療薬を適切に使い分けて,MM患者が少しでも安寧に長生きできるよう,実臨床に努めていきたいと思う次第である。

【参考文献】

  1. 日本骨髄腫学会編. 多発性骨髄腫の診療指針<第4版>, 2016年, 文光堂.
  2. 国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」.
  3. 朝日新聞2017年8月25日朝刊「高い薬,公的負担いくらまで?」
  4. がんの統計編集委員会編. がんの統計「2015年版」,がん研究振興財団.
  5. Veillette A, Guo H. Crit Rev Oncol Hematol 2013; 88: 168-177.
  6. Cheng M, et al. Cell Mol Immunol 2013; 10: 230-252
  7. Godfrey J, Benson DM Jr. Leuk Lymphoma 2012; 53: 1666-1676
  8. Carbone E, et al. Blood 2005; 105: 251-258.
  9. Frohn C, et al. Br J Haematol 2002; 119: 660-664.
  10. Lonial S, et al. N Engl J Med 2015; 373: 621-631.

図1 MMに対する治療薬

図2 骨髄腫細胞の進行とNK細胞数・NK活性(イメージ図)