一般講演3-1

AYA世代急性リンパ性白血病における網羅的融合遺伝子解析1)

安田 貴彦 先生

国立病院機構 名古屋医療センター 臨床研究センター 生態情報解析室

急性リンパ性白血病(ALL)は,一般的には小児と成人に大別して治療対応されているが2),その中間に当たる思春期および若年成人(adolescents and young adults: AYA)世代をどう捉えて対応すべきか。

たとえば,治療強度は小児レベルとして強くすべきか,成人レベルとしてマイルドにすべきか3)。そのほか,AYA世代に特有のさまざまな心理社会的問題に対するサポートをどうしていくべきかといった課題もある。

この世代のALL患者における発がん機構の詳細はほとんど解明されておらず,分子生物学的理解も遅れている。ALLは,年齢ごとに染色体構造異常が大きく異なり,AYA世代に特徴的な融合遺伝子が少なく,未知のポピュレーションの割合が高い4)

そこで本研究では,JALSG ALL202-U(フィラデルフィア染色体陰性)研究の登録症例73例(実際には15~24歳)の研究残余検体を対象に,次世代シーケンサーを用いて,白血病細胞を網羅的に解析し,新たな発がん融合遺伝子を探索した。

その結果,最も多い融合遺伝子はDUX4融合遺伝子(14%)で,以下,ZNF384融合遺伝子(12%),MEF 2D融合遺伝子(7%),TCF3-PBX1遺伝子(5%),CRLF2融合遺伝子(5%)の順であった。

ここで,対象検体を追加してB細胞ALL患者115例における融合遺伝子の年齢ごとの頻度分布を検討したところ,DUX4融合遺伝子がAYA世代に特有のものであることが示唆された()。この融合遺伝子をさらに詳細に解析すると,興味深いことに,4番あるいは10番染色体のサブテロメア領域に存在するDUX4遺伝子に含まれるタンデムな繰り返し領域D4Z4リピートのIGH座への挿入が高頻度に認められ,異常なC末端をもつDUX4蛋白が高発現していた。

さらに,マウス移植アッセイにおいてマウスpro-B細胞にDUX4-IGH融合蛋白を発現させると,in vivoにおいてB細胞白血病が発症した。つまり,染色体転座によるDUX4-IGH融合遺伝子がALLの発症・維持に重要であることが示された。

一方,ZNF384融合遺伝子やMEF2D融合遺伝子の詳細もわかってきており,融合遺伝子の情報から,AYA世代ALLは他の年齢層のALLとは臨床的に異なる可能性が示された。また,少数例ながら各融合遺伝子と予後との関係をみると,DUX4融合遺伝子を有する症例群は予後が良好であるが,MEF2D融合遺伝子を有する症例群は予後不良であり,これが多数例で確認できれば,臨床的な新たな予後マーカーとなる可能性がある。今後,さらに病態のみならず診断法や治療法の開発を含めて,これら新規融合遺伝子の研究を進めていきたい。

【参考文献】

  1. Yasuda T, et al. Recurrent DUX4 fusions in B cell acute lymphoblastic leukemia of
    adolescents and young adults. Nat Genet 2016; 48: 569-577.
  2. 大野竜三 編. よくわかる白血病のすべて. 2005, 永井書店.
  3. Hayakawa F, et al. Markedly improved outcomes and acceptable toxicity in adolescents and young adults with acute lymphoblastic leukemia following treatment with a pediatric protocol: a phase II study by the Japan Adult Leukemia Study Group. Blood Cancer J 2014; 4: e252.
  4. Harrison CJ. Targeting signaling pathways in acute lymphoblastic leukemia: new insights. Hematology Am Soc Hematol Educ Program 2013; 2013: 118-125.

図 年齢層ごとの融合遺伝子の頻度:B-ALL 115例の融合遺伝子 の頻度