一般講演2-2

ヒト造血における単能性巨核球前駆細胞の同定1)

宮脇 恒太 先生

九州大学病院 遺伝子細胞療法部/九州大学大学院 病態修復内科学
(第一内科)

造血幹細胞(HSC)から系統特異的な前駆細胞,さらに成熟細胞へと分化するメカニズムを理解することは,造血器腫瘍の病態解明のために重要である。巨核球・血小板系統の細胞は,その分化過程において,核を複製しながら細胞分裂はしないことで多核の巨核球となり

(endomitosis),巨大化した細胞質の外側から小片がちぎれるような形で剥がれていくことで血小板を産生する(bleb formation),といった特徴的な形態変化を辿ることで知られる2)。しかし,ヒト巨核球・血小板系統の細胞の分化機構は,実験系に関連する制約などもあって未解明な点が多い。その起源として,巨核球・赤芽球系共通前駆細胞(MEP)から巨核球・血小板系の単能性前駆細胞(MegP)と赤芽球系前駆細胞(EryP)に分かれるとされており3),近年,森らによってMEP内にEryPの存在が証明されたが,MegPの存在についてはいまだ不明である4)

そこで我々は,高感度シングルセル遺伝子発現解析を用いて,正常骨髄細胞の造血幹/前駆細胞分画のheterogeneityを明らかにすることで,MegPを探索することにした。これまでMegPに分化すると考えられていたMEPの大部分は,専ら赤芽球系統特異的な遺伝子を発現していることから,MEP自体が大きく赤芽球系統にコミットした細胞集団であることが示唆された。驚くべきことに,MEPの上流に位置し,更に未分化である骨髄球系共通前駆細胞

(CMP)内の一部に,既に巨核球系細胞への分化に必須な遺伝子を特異的に、かつ高レベルに発現する細胞クラスターを発見した。これらの細胞を前向きに同定するため,最も普遍的に発現している細胞表面マーカー遺伝子としてCD41に着目した。

CD41の発現は,造血幹細胞/前駆細胞のうちCMPの一部(5~10%)にのみ限定的に認められ,HSCやMEPでは認められなかった。これらCD41+ CMPは骨髄芽球様の幼若な形態を呈しながら,endomitosisやbleb formationといった巨核球特異的な形態変化を持ち合わせていた。in vitro,及びBRGSKマウス5)を用いたin vivo での分化能解析において,CD41+ CMPは巨核球系統への強い分化能を示す一方,巨核球系以外への分化能を完全に失っていたことから,これらがHSCから巨核球系統への分化を運命づけられた細胞,すなわちMegPであると考えた。網羅的遺伝子発現解析やlineage tracing assayの結果も併せて,MegPは,これまで巨核球の供給源と思われていたMEPとは独立した,ヒト巨核球造血の主要経路と考えられた。

さらに興味深いことに,骨髄増殖性疾患の1つである本態性血小板血症(ET)患者の骨髄において,MegPの顕著な増加を認め,また同疾患のdriver変異であるJAK2遺伝子変異の蓄積が認められたことから,この細胞集団がETの病態形成に関与する可能性が示唆された()。

今回我々が同定した,単離可能で,かつ機能的に均一なヒトMegPは,ヒト正常造血および悪性造血のメカニズムを解明するために有用であると考える。

【参考文献】

  1. Miyawaki K, et al. Identification of unipotent megakaryocyte progenitors in human hematopoiesis. Blood. 2017; 129: 3332-3343.
  2. 平野正美 監修. ビジュアル臨床血液形態学. 2004, 南江堂.
  3. 石川春律ほか編. 標準細胞生物学. 2006, 医学書院.
  4. Mori Y, et al. Prospective isolation of human erythroid lineage-committed progenitors. Proc Natl Acad Sci USA. 2015; 112: 9638-9643.
  5. Yurino A, et al. Enhanced Reconstitution of Human Erythropoiesis and Thrombopoiesis in an Immunodeficient Mouse Model with KitWv Mutations. Stem Cell Reports. 2016; 7: 425-438.

図 ヒト巨核球分化モデル