一般講演2-1

Calreticulin変異マウスは本態性血小板血症を発症し,
JAK阻害薬ruxolitinibはその病態を改善する1)

幣 光太郎先生

宮崎大学医学部 消化器血液学

骨髄増殖性腫瘍としての本態性血小板血症(ET)あるいは原発性骨髄線維症(PMF)の患者の25~30%では,calreticulin(CALR)遺伝子変異が認められ,これによりフレームシフトを引き起して新規のC末端を有する変異蛋白が生じる2,3)。本研究ではまず,293T変異細胞において,トロンボポエチン受容体(MPL)存在下で,CALR遺伝子変異がシグナル伝達およびSTAT5を活性化することを明らかにした。次にCRISPR/Cas9遺伝子エディティング法を用いて,CALR遺伝子変異をノックインした巨核球系細胞株CMK11-5および赤白血病由来細胞株F-36P-MPLを作成した。いずれのCALR遺伝子変異ノックイン細胞株においても,STAT5リン酸化とともに,細胞増殖の亢進およびサイトカイン非依存的増殖の獲得が認められた。

最後に,52bp欠失のヒトCALR遺伝子変異(CALRdel52)を発現するトランスジェニック(TG)マウスを作成し,個体レベルでCALR遺伝子変異の影響を検討した。TGマウスでは,骨髄中の成熟巨核球の増加とともに,血小板数が増加し,ETを発症した。しかしながら,ヘモグロビン濃度上昇や白血球数増加は認められず,骨髄線維症は生じなかった。また,in vivoでの競合的継代移植実験において,CALRdel52-TGマウスの骨髄細胞は野生型骨髄細胞を排除しなかった。このことから,CALRdel52造血幹細胞(HSC)の自己複製能は野生型HSCと同様であることが示唆された。ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬ruxolitinibは,TGマウスにおいて血小板血症を改善し(),骨髄中の巨核球数およびHSC数の増加を抑制した。

以上の所見から,CALRはJAK-STAT経路には属さないが,変異型CALRのC末端が,特にMPL下流のJAK-STATシグナル伝達を活性化するという病態モデルが想定され,これがCALRによる骨髄増殖性腫瘍において中心的な役割を果たしていると考えられる。

さらに研究を進め,CALRのhaploinsufficiency(片方の遺伝子の発現異常)は,CALRdel52-TGマウスの血小板産生能には影響を与えないが,HSCの増殖能を亢進させることを見出した。このことから,haploinsufficiencyが,野生型造血を背景としたET発症に寄与している可能性が示唆される。また,CALR完全欠損マウスは脾腫と髄外造血を呈し,ストレス下で白血病を発症させることがわかった。このことからは,CALRがtumor suppressorとしての役割を持つことが示唆される。

【参考文献】

  1. Shide K, et al. Calreticulin mutant mice develop essential thrombocythemia that is ameliorated by the JAK inhibitor ruxolitinib. Leukemia 2017; 31: 1136-1144.
  2. Klampfl T, et al. Somatic mutations of calreticulin in myelofibrosis neoplasms. N Engl J Med 2013; 369: 2379-2390.
  3. Nangalia J, et al. Somatic CALR mutations in myeloproliferative neoplasms with nonmutated JAK2. N Engl J Med 2013; 369: 2391-2405.

図 CALRdel52-TGマウスにおけるruxolitinibによる 血小板血症の改善