一般講演1-2

PD-1は低用量IL-2療法における制御性T細胞恒常性を調節する1)

松岡 賢市先生

岡山大学病院 血液・腫瘍内科

制御性T細胞(Treg)は,胸腺内で分化する免疫抑制機能に特化したCD4陽性T細胞である。自己MHCと高親和性をもち,CD25およびFoxp3を恒常的に発現する活性化した表現型で胸腺から供出され,末梢で分裂を繰り返す 2)。Tregはこの特徴的なホメオスタシスにより,生体内で速やかに必要十分な免疫抑制を発揮し,免疫の安全な運行を担保する。 一方で,Tregは生理的に活性化状態であるために外的環境の変化によりアポトーシスしやすい3)。多様な生体環境において,このホメオスタシスを維持するためには,何らかの過活性化抑制因子が働いているはずである。

Tregは,造血幹細胞移植(HSCT)後の免疫寛容の維持に中心的役割を果たしている4)。我々はこれまでに,インターロイキン-2(IL-2)の低用量投与が血中のTregを増加させ,慢性移植片対宿主病(cGVHD)の臨床症状を改善することを報告した5,6)。しかし,IL-2投与中のTregホメオスタシス調節機構については十分検討されていない。そこで,その解明に向けて,マウスモデルおよびcGVHD患者検体を用いて,IL-2投与中におけるTregの抑制性coreceptorの役割について検討した。

低用量IL-2を投与したマウスモデルの実験結果をまとめると,低用量IL-2は,Treg選択的にSTAT5のリン酸化を導き,Tregを選択的に増幅させた。この増加したTregは,本来の免疫抑制能を維持していた。低用量IL-2投与時におけるTreg分化抑制因子候補の発現をみると,特にCD44+CD62L+セントラルメモリーTregにおけるPD-1の発現が増幅したが,CTLA-4,LAG-3,TIM-3などのその他の抑制分子の発現に変化はみられなかった。

そこでPD-1に注目して,抗PD-1抗体をIL-2とともに投与して,PD-1経路を遮断したところ,投与開始後まもなく,急速なSTAT5リン酸化とTregの増幅を示し,その後,Tregはアポトーシス促進性(proapoptotic)となり,IL-2によるTreg増加効果は完全に消失した。これは,PD-1欠損マウスでも同様の結果を示した。

次に,低用量IL-2療法を受けているcGVHD患者の末梢血Tregを解析したところ,IL-2によりTreg増幅が誘導された後,速やかにセントラルメモリーTregにおけるPD-1発現が増加した。特に臨床的奏効例においては,Treg優位なPD-1発現増加が認められた。これは,PD-1経路がTregを介する免疫寛容を支えていることを示唆している。

これらの所見から,PD-1はIL-2投与中におけるTregの増幅,セントラルメモリーからエフェクターメモリーへの分化およびアポトーシスを調節する重要な恒常性調節因子であることが示唆された()。このメカニズムの解明は,今後の積極的な免疫寛容導入を目指す治療戦略の開発に寄与するものと考えられる。

以上の研究は,筆頭著者である浅野豪先生(現在Harvard大学Dana-Farberがん研究所に留学中)により進められたものであり,今回の発表では松岡が代理で報告した。

【参考文献】

  1. Asano T, Matsuoka K, et al. PD-1 modulates regulatory T-cell homeostasis during low-dose interleukin-2 therapy. Blood 2017; 129: 2186-2197.
  2. Sakaguchi S, et al. Regulatory T cells and immune tolerance. Cell 2008; 133: 775-787.
  3. Vukmanovic-Stejic M, et al. Human CD4+ CD25hi Foxp3+ regulatory T cells are derived by rapid turnover of memory populations in vivo. J Clin Invest 2006; 116: 2423-2433.
  4. Matsuoka K, et al. Altered regulatory T cell homeostasis in patients with CD4+ lymphopenia following allogeneic hematopoietic stem cell transplantation. J Clin Invest 2010; 120: 1479-1493.
  5. Koreth J, et al. Interleukin-2 and regulatory T cells in graft-versus-host disease. N Engl J Med 2011; 365: 2055-2066.
  6. Matsuoka K, et al. Low-dose interleukin-2 therapy restores regulatory T cell homeostasis in patients with chronic graft-versus-host disease. Sci Transl Med 2013 Apr 3; 5(179): 179ra43.

図 炎症状態におけるTregのホメオスタシス