一般講演1-1

複数臍帯血ユニット由来移植補助製剤の開発1)

石田 隆 先生

北里大学医学部 輸血・細胞移植学

臍帯血は造血幹細胞移植(HSCT)における貴重な移植ソースであるが,各臍帯血当たり(1ユニット)の含有細胞数が少なく生着が遅れることが問題になっている2)。その解決のため,欧米を中心に2ユニットの臍帯血移植が施行されているが,細胞数の不足を補うには十分でなく,また3 ユニット以上の混合の試みではむしろ副作用が前面に出ることが指摘されている3,4)。また一方では,含有細胞数の少ない臍帯血は未使用のままデッドストックとなっている5)

本研究は,このようなデッドストックの臍帯血を活用すると同時に,臍帯血移植における細胞数不足の克服を目的としている。その基本的戦略は,プライマリーユニットとして1ユニットの適合全臍帯血を用い,サポートユニットとして複数の臍帯血由来造血幹細胞/前駆細胞(HSC/HSPC)を加えようというものである(図)。これにより,HSCT後の骨髄抑制から速やかな造血の回復,特に感染症を防ぐ好中球,出血を防ぐ血小板を回復させることを目的としている。そのためには,プライマリーユニット以外の移植片を余剰な免疫細胞を除去したHSC/HSPCに相当する分画のみに純化することで,複雑な免疫反応を回避できると考えた。

この仮説を検証すべく,致死量放射線照射マウスに,プライマリーユニットの全骨髄細胞に加えて複数の異なるマウス種由来のHSC/HSPCを混合して移植し検証した。その結果,混合ドナー由来のHSC/HSPCは,互いに干渉することなく移植後のレシピエントにおける血球の回復に寄与し,長期生存をもたらすことが確認された(bridging effect)。

そこでさらに,ヒト臍帯血由来細胞のマウスへの移植でも同様の効果が得られるかどうかを検討した。ここでは,臨床応用を視野に,HLAの異なる複数ユニットの凍結臍帯血から一度にHSC/HSPCを抽出する技術開発を試みた。そして,日本赤十字社・関東甲信越臍帯血バンクの協力を得て,Miltenyi Biotech社のCliniMACS Prodigyという装置を用いることにより,凍結臍帯血から最大9ユニットのヒト混合CD34陽性細胞分画の抽出に成功した。これをサポートユニットとして用いて,総計10ユニットを免疫不全マウスに移植したところ,早期の造血回復に寄与し得ることが示された。

この移植補助製剤を用いた新規臍帯血移植療法の確立が現行の問題点を解消し,移植療法の拡充に貢献することを期待して,さらに研究を進めている。

【参考文献】

  1. Ishida T, et al. Multiple allogeneic progenitors in combination function as a unit to support early transient hematopoiesis in transplantation. J Exp Med 2016; 213: 1865-1880.
  2. Rodrigues CA, et al. Analysis of risk factors for outcomes after unrelated cord blood transplantation in adults with lymphoid malignancies. J Clin Oncol 2007; 27: 256-263.
  3. Wagner JE, et al. One-unit versus two-unit cord-blood transplantation for hematologic cancer. N Engl J Med 2014; 371: 1685-1694.
  4. Fanning LR, et al. Allogeneic transplantation of multiple umbilical cord blood units in adults: role of pretransplant-mixed lymphocyte reaction to predict host-vs-graft rejection. Leukemia 2008; 22: 1786-1790.
  5. 日本赤十字社関東甲信越ブロック血液センター
    保存状況http://www.ktks.bbc.jrc.or.jp/saitai/hozon.html

図 本研究の基本戦略