CML Seminar

Clinical Application of Anti-CML immunity in the era of TKI therapy

藤原 弘 先生

愛媛大学医学部附属病院 第一内科

慢性骨髄性白血病(CML)に対するチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)治療が大きな成果をもたらしたのは,1960年のフィラデルフィア染色体の発見から,9番染色体と22番染色体の相互転座,切断点の同定と融合遺伝子BCR-ABLの発見,そのシグナルによる造血細胞側のチロシンキナーゼ活性の恒常的な亢進に起因する白血病化に至る機序の解明等々,CMLの発症機序の根幹にアプローチできたからである。

一方,TKI不応例・難治例に対する治療の開発も進められている。この治療戦略においても根本原因にアプローチする方法論が踏襲されており,今日,造血器腫瘍のみならず固形がんの分野でも,がんの原因となる遺伝子異常を直接,治療標的とする治療法の開発が進められている。

こうしたTKI治療を巡る研究のなかから,免疫療法に対する関心が高まってきた。具体的には,CML患者が本来もっている抗腫瘍免疫能を高めることや,進行例やTKI抵抗性の症例に対する造血幹細胞移植を含めた免疫応答を再構築する等である。そして,微小残存病変(MRD),さらにはCML幹細胞の抗腫瘍免疫からのエスケープにどう対処するかという課題も残されている。

最近,TKI治療に際して残存するCML幹細胞の生存にはBCR-ABLからの刺激は直接必要ないことが判明し1),その機序を詳細に検討したところ,c-MYC系が亢進し,p53系が低下していることがわかった2) 。そこで,in vitroでc-MYCを抑制する薬剤CPI-203とp53を活性化する薬剤RITAを用いると,それぞれ単独でもCML幹細胞が減少し,さらに併用すると相乗的に減少した2) 。しかも,増殖を抑制できるだけでなく,0.2~5 μMのCPI-203と1~25 nMのRITAの併用により,72時間後,CML幹細胞の約15~35%でアポトーシスを誘導でき2) ,TKI以外の治療戦略が示唆された2)

また,CML患者の抗腫瘍免疫の詳細な解明が進みつつあり,NK細胞の機能を高める方法として,IL-3Rα,CD123に対するモノクローナル抗体CSL362による抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性の亢進3),あるいは既存のIFN-α製剤の使用4)などが報告されている。

我々は,CML特異的免疫療法の開発を試みており,アズール顆粒,一次顆粒に含まれるprimary granule protein(PGP)であるPR3やNE,Cath-G(CG)などの白血病関連抗原を標的とした治療戦略に着目している。PGPの発現はCMLの前駆細胞に特異的で,正常な造血幹細胞には発現しない5) 。PGPを認識する細胞傷害性リンパ球(CTL)はCML患者の末梢血中に存在し6) ,CTLがCML幹細胞を殺傷しうる可能性が示唆される7) 。PGPを標的とする細胞免疫療法については,前臨床試験が終わり,臨床試験の段階に入ろうとしているところである(図1)。

また,AuroraキナーゼA(AURKA)のキナーゼ領域に抗原性をもつエピトープを認識するCTLのTCR遺伝子ベクター(内因性TCRを抑える)を導入した機能強化型エフェクターT細胞を作製し8)図2),AURKAを用いたペプチドワクチン療法の臨床試験に着手している。

【参考文献】

  1. Hamilton A, et al. Blood 2012; 119: 1501-1510.
  2. Abraham SA, et al. Nature 2016; 534: 341-346.
  3. Nievergall E, et al. Blood 2014; 123: 1218-1228.
  4. Polivkova V, et al. PLoS One 2016; 11: e0155959.
  5. Fujiwara H, et al. Clin Cancer Res 2005; 11: 4495-4503.
  6. Molldrem JJ, et al. Nat Med 2000; 6: 1018-1023.
  7. Fujiwara H, et al. Blood 2004; 103: 3076-3083.
  8. Nagai K, et al. Blood 2012; 119: 368-376.

図1 PGPを標的とした最新の治療戦略

図2 機能強化型AURKA特異的TCR導入T細胞の開発