一般講演3-2

A TIM-3/Gal-9 autocrine stimulatory loop drives self-renewal of human myeloid leukemia stem cells and leukemic progression1)

菊繁 吉謙 先生

九州大学大学院医学研究院 応用病態修復学

 白血病幹細胞(LSC)は,自己複製能と白血病細胞への限定的分化能をもつ白血病の本体ともいえる細胞である。その自己複製能に関与するシグナル伝達機構の解明は,LSC根絶への道を拓くと期待される。

我々の研究グループは,すでに網羅的遺伝子解析により急性骨髄性白血病(AML)のLSCに高発現するが正常造血幹細胞(HSC)には発現しない表面抗原として,TIM-3(T-cell immunoglobulin mucin-3)を同定している2)。その機能の解明に向けての研究から,興味深く示唆に富む知見が得られてきた。

TIM-3のリガンドの1つであるgalectin-9(Gal-9)に着目すると,特にAML患者では血清Gal-9濃度が健常者,非ホジキンリンパ腫,B-ALL患者に比べ有意に上昇しており(391.8 pg/mL vs 22.4,33.5,32.3 pg/mL,それぞれp<0.05,Student’s t検定),これはTIM-3陽性のAML細胞あるいはLSCから分泌されていることが明らかになった。つまり,オートクリン様式である。

そして興味深いことに,このTIM-3/Gal-9によるオートクリン刺激は,TIM-3陽性LSCのin vivoでの白血病再構築能と自己複製能を正に制御することがわかってきた。すなわち,TIM-3発現LSCは自身がリガンドを分泌してそれと結合し,自身にTIM-3シグナルを出して自己複製能を高めるという非常にユニークなオートクリン刺激ループをもっているわけである。

さらに,このオートクリン・ループによるGal-9を介するTIM-3刺激は,また別のLSC自己複製能の促進因子として知られているNF-κBとβ-カテニンのシグナル伝達経路を共活性化することから1),これらがTIM-3/Gal-9シグナルの下流に存在することが示唆された。

そこで,AML以外の骨髄系腫瘍においても検討した結果,TIM-3/Gal-9オートクリン機構は,骨髄異形成症候群(MDS),さらには慢性骨髄性白血病(CML)を含む骨髄増殖性腫瘍全般に存在すること,また前白血病状態のさまざまな白血病性形質転換にも関与していた。つまり,骨髄系腫瘍のLSCは正常HSCとの競合に打ち勝ってclonal dominancyを獲得して生き残るための機序としてTIM-3/Gal-9オートクリン機構を利用していると考えられる()。

以上,このTIM-3/Gal-9オートクリン機構を標的とする治療的アプローチは,AML治療のみならず,慢性期骨髄系腫瘍からAMLの進展抑制の治療戦略としても有意義と考える。

【参考文献】

  1. Kikushige Y, et al. Cell Stem Cell 2015; 17: 341-352.
  2. Kikushige Y, et al. Cell Stem Cell 2010; 7: 708-717.

図 TIM-3/Gal-9 autocrine stimulatory loop might be critical in clonal expansion and maintenance of myeloid LSCs