一般講演3-1

Treatment and survival among 1594 patients with ATL1)

石塚 賢治 先生

鹿児島大学難治ウイルス病態制御研究センター 血液・免疫疾患研究分野 教授

英国留学中の筆頭著者・勝屋弘雄(Imperial College London,熊本大学)に代わり,我々の研究・調査を報告する。

成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)は,ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)1型によって起こる成熟Tリンパ球の悪性腫瘍である。その治療や予後の実態は1980年代の国内調査以来,調べられていない。その間に強力な多剤併用化学療法や同種造血幹細胞移植(HSCT)が導入されるなど治療手段が加わり,患者の予後もかわっていることが予想される。

そこで,現在の日本におけるATLの臨床像と治療の現状を明らかにしようという取り組みがなされた。その大筋をまとめると図1のとおりで,ATL-prognostic index(PI)プロジェクトとして,全国81の血液内科診療施設から2001年~2009年の新規診断ATL患者1,552例のデータが集められた。これを用いて,急性型・リンパ腫型に関するATL-PIを作成した。さらに,慢性型・くすぶり型は皮膚科でも診療されているので,皮膚科3施設の当該患者113例のデータも加え,ATLの診療実態と予後について解析した。

総計84施設・1,665例のうち解析対象は1,594例で,病型別には急性型895例・リンパ腫型355例・慢性型187例・くすぶり型157例であった。生命予後に関しては,生存期間中央値(MST)がそれぞれ8.3,10.6,31.5および55.0ヵ月であり,4年生存率(OS)は11%,16%,36%および52%であった。

ATL-PIは,病期,PS,年齢,血清アルブミン値,可溶性IL-2R値の5因子の有無でスコア化し,その合計点から低・中・高リスクに分類した。

臨床病型別生存曲線を図2に示す。

急性型・リンパ腫型に対する同種HSCT(227例)の成績は,移植後のMSTが5.9ヵ月,5年OSが26%で,まだ十分とはいえないものの向上しつつある。しかし,高齢患者にはほとんど施行されていない(65歳以上の1%のみ)。

また,移植成績は第1寛解期ではMST 22.0ヵ月,治療抵抗例では3.5ヵ月,再発例では3.2ヵ月と(p<0.0001,log-rank検定,第1寛解期との比較),移植時の寛解状態に依存しており,有効な寛解導入療法の開発が望まれる。一方,慢性型・くすぶり型ATLに対しては,新たな発想の治療戦略の開発が求められる。なお,慢性型・くすぶり型ATLについては,可溶性IL-2値が予後因子となる可能性が示唆された(sIL-2値≦1,000 U/mL:Low,>1,000~6,000 U/mL:Intermediate,>6,000 U/mL:High)。

以上,後方視的症例集積のバイアスやデータ精度の限界等の問題はあるものの,ひたすら多数症例を集めて日常臨床データを虚心に見直し,臨床像や治療内容,予後を明確にすることは臨床の醍醐味であろうと思う。

【参考文献】

  1. Katsuya H, Ishitsuka K, et al. Blood 2015; 126: 2570-2577.

図1 ATL-prognostic index(ATL-PI)プロジェクト

図2 臨床病型別生存曲線