一般講演2-1

後天性再生不良性貧血におけるクローナル造血1)

吉里 哲一 先生

京都大学大学院医学研究科 腫瘍生物学講座

後天性再生不良性貧血(AA)は特発性骨髄不全の主要な原因であり,その病態としては免疫系を介した造血幹細胞の破壊,これに基づく汎血球減少・造血不全が挙げられている。AAには免疫抑制療法が有効であるが,通常,約15%の患者が骨髄異形成症候群(MDS)や急性骨髄性白血病(AML)に移行する2)。また,これまでの研究から,AAではさまざまなクローナル造血がみつかり,多様な染色体異常・遺伝子変異が報告されている3-7)

そこで,日本と米国の国際共同研究として,金沢大学,米国立衛生研究所(NIH)およびCleveland Clinicから集められた総計439症例・668末梢血DNA検体の遺伝子変異解析がなされた。その結果を報告する。

439症例の検体についてのターゲットシーケンスでは,造血器腫瘍の主要標的106遺伝子を解析した。その結果,上記3コホートとも約1/3の症例に体細胞変異を認め,このうちの約1/3は複数の変異をもっていた。ただし,その変異のアリル頻度は全般的に低く,別コホートのMDS患者では30.4%であったが,AA患者では9.3%であった。経時的に追跡できたケースでは,約70%の変異は診断時から存在していた。

変異スペクトラムをみると,特定の遺伝子に限られ(主にBCOR/BCORL1,PIGA,DNMT3A,ASXL1),MDSと比較すると,DNMT3AとASXL1変異は共通していたが,BCOR/BCORL1とPIGA変異はAAに偏っていた。なお,白血病で多くみられるTET2・スプライシング因子の変異はAAでは少なかった。

変異の頻度は年齢とともに増加し(p<0.001,Cochran-Armitage傾向検定),その変異の増加パターンには加齢に関連した特徴を認めた。

変異またはコピー数異常いずれかのクローナル造血は47%で検出された。

また一方,52症例についての全エクソンシーケンスからは,25例(48%)に平均1.2個の変異を認めた。変異プロファイルとしては,CpGサイトのシトシン(C)→チミン(T)変異に偏っていた。経時的には,DNMT3AとASXL1変異クローンは拡大したが,BCOR/BCORL1とPIGA変異クローンは不変または縮小傾向を示し,また予後良好な傾向にあった[ハザード比0.46(95%CI:0.21-1.0),p=0.051(Cox比例ハザードモデル)]。ただし,経時的変化は多くの場合,予測不能で,主要な変異クローンの存在は必ずしもMDS/AMLへの進展と関連しなかった。

以上,このAAに関する包括的遺伝子解析のデータが今後,AAの分子病態・進展機序の解明につながるとともに,クローナル造血のモニタリングが臨床的有用性を発揮する可能性に期待したい。

【参考文献】

  1. Yoshizato T, et al. Somatic mutations and clonal hematopoiesis in aplastic anemia. N Engl J Med 2015; 373: 35-47.
  2. Socie G, et al. Semin Hematol 2000; 37: 91-101.
  3. Young NS, et al. Blood 2006; 108: 2509-2519.
  4. Mortazavi Y, et al. Eur J Haematol 2000; 64: 385-395.
  5. Afable MG II, et al. Blood 2011; 117: 7876-6884.
  6. Mikhailova N, et al. Haematologica 1996; 81: 418-422.
  7. Katagiri T, et al. Blood 2011; 118: 6601-6609.