一般講演2-3

モノソミー7責任遺伝子の単離と機能解析の試み1-3)

松井 啓隆 先生

広島大学原爆放射線医科学研究所 がん分子病態研究分野

モノソミー7および7番染色体長腕部欠損(-7/7q-)は、骨髄異形成症候群(MDS)や骨髄性白血病患者で高頻度にみられるノンランダムな染色体異常として知られている。広島大学をはじめとする国際共同研究グループは以前、7q21.3サブバンド上に骨髄腫瘍抑制遺伝子候補(SAMD9、SAMD-like=SAMD9L、MIKI)を同定した2)。今回、その後の研究成果を松井先生が代表して報告した。
MIKIに関しては、その遺伝子産物は細胞分裂期には中心体と紡錘糸に局在する。MIKIタンパク質の発現低下によって、細胞の有糸分裂時の中心体・紡錘糸に異常が起こり、中心体を起点とした紡錘糸形成ができなくなり、染色体が赤道面に整列できずに散乱したままで、分裂停止や分裂死に至るか、あるいは異常な核が生じることがわかってきた3)。このことは造血幹細胞(HSC)でも起こりうるわけであり、それが骨髄異形成につながる可能性がある。
  次に、SAMD9とSAMD9L遺伝子欠損の病的意義について検討するため、Samd9L遺伝子欠損マウスを作製した。すると注目すべきことに、Samd9L+/-マウスおよびSamd9L-/-マウスが、-7/7q-を伴うヒト疾患に類似した骨髄疾患を発症することが明らかになった1)
 そして、このSamd9L遺伝子欠損マウス由来のHSCについて解析すると、コロニー形成能の増強およびin vivoでの再構築能の増強が示された。
  さらに、Samd9Lは初期エンドソームに局在することがわかり、Samd9L遺伝子欠損マウス由来のHSCでは、初期エンドソーム融合が遅延し、その結果として、リガンドと結合したサイトカイン受容体がそのままの状態でエンドソーム分画に残存することを見出した。つまり、SAMD9Lが正常に働くと、サイトカインシグナルは瞬時に発して一過性で終わるが、SAMD9Lが働かないとシグナル伝達が遷延化すると考えられる。
  これらの所見から、SAMD9LおよびSAMD9遺伝子のハプロ不全が骨髄形質転換に関与していることが示唆された。
  ここまでの知見をまとめると()、SAMD9L遺伝子欠損はサイトカインシグナルの異常を介して何らかのエピゲノム変化をきたし、HSC自己複製での分化異常につながると想定される。また一方、MIKI遺伝子欠損は有糸分裂中心体の異常を介して骨髄異形成につながるものと考えられる。いずれにしても複数の責任遺伝子が存在し、その欠損が重なってモノソミー7の病態を形成すると考えられ、さらに多面的に解析を重ねている。

【参考文献】

  1. Nagamachi A, Matsui H, et al. Haploinsufficiency of SAMD9L, an endosome fusion facilitator, casuses myeloid malignancies in mice mimicking human diseases with monosomy 7. Cancer Cell 2013; 24: 305-17.
  2. Asou H, et al. Identification of a common microdeletion cluster in 7q21.3 subband among patients with myeloid leukemia and myelodysplastic syndrome. Biochem Biophys Res Commun 2009; 383: 245-51.
  3. Ozaki Y, et al. Poly-ADP ribosylation of Miki by tankyrase-1 promotes centrosome maturation. Mol Cell 2012; 47: 694-706.

図 モノソミー7における複数の責任遺伝子