一般講演2-2

Sf3b1欠損による造血幹細胞の機能障害1)

指田 吾郎 先生

千葉大学大学院医学研究院 細胞分子医学

骨髄異形成症候群(MDS)の発症機序はまだ明らかでない。指田先生らの共同研究グループは、次のような背景のもとSF3B1遺伝子変異に着目した。

いくつかの悪性血液疾患においては、RNAスプライシング経路にかかわる複数の遺伝子に変異が認められている2)。特に、スプライセオソームのサブユニットU2と複合体を形成して中心的役割を果たす蛋白SF3B1の遺伝子変異は、MDS発症につながる可能性がある環状鉄芽球を伴う不応性貧血(RARS)患者では70~85%に認められ、環状鉄芽球の存在と高い関連性を示す3)。しかし、MDSにおけるSF3B1遺伝子変異の病態基盤については解明されていない。そこで、まず造血細胞における遺伝子Sf3b1の機能を解析した。

その結果、ヘテロ接合のSf3b1+/-マウスはほぼ正常な造血機能を保っており、長期間の観察においても造血器腫瘍を発症しなかった。しかし、Sf3b1+/-細胞の競合的骨髄再構築は障害されており、軽度のアポトーシス亢進を認めた。ただし、その細胞分化能に明らかな障害はなかった。

さらに、shRNAによってSf3b1をノックダウンしたSf3b1+/-造血幹細胞(HSC)では、in vitro、in vivoのいずれにおいても野生型(WT)細胞に比して、その増殖活性が著しく障害されていた(図)1)。一方、血球分化能に関しては、培養系においてヘテロ接合マウスのSf3b1+/-細胞と、Sf3b1をノックダウンしたSf3b1+/-細胞のいずれにおいても、環状鉄芽球の出現頻度は増加が予想されていたが、WT細胞と比較して有意な変化はなかった。

また、Sf3b1ハプロ不全は、ナンセンス変異によるmRNA崩壊(NMD)経路を活性化することはなかった。

以上、Sf3b1欠損はHSCの増殖能を著しく障害することから、Sf3b1の発現レベルはHSCの増殖能に重要であることが示唆された。しかしながら、Sf3b1のハプロ不全だけでは環状鉄芽球の出現は促されず、MDSも発症しないことが示された。

今後は、SF3B1遺伝子変異体がRNAスプライシングも含め、何らかの新たな機能を獲得しうるかどうかを解明することが課題である。また、SF3B1遺伝子変異と共存しうる遺伝子変異(たとえば DNMT3A)との相互作用によるMDSの発症についても追究していきたい。

【参考文献】

  1. Wang C, Sashida G, et al. Depletion of Sf3b1 impairs proliferative capacity of hematopoietic stem cells but is not sufficient to induce myelodysplasia. Blood 2014; 123: 3336-43.
  2. Bejar R, et al. Validation of a prognostic model and the impact of mutations in patients with lower-risk myelodysplastic syndromes. J Clin Oncol 2012; 30: 3376-82.
  3. Yoshida K, et al. Frequent pathway mutations of splicing machinery in myelodysplasia. Nature 2011; 478: 64-9.

図 Sf3b1ノックダウンはHSCの増殖能を著しく障害する:
WTおよびSf3b1ノックダウンHSCの増殖(SCF+TPO添加培養)