一般講演2-1

骨髄細動脈ニッチによる造血幹細胞維持機構1)

國﨑 祐哉 先生

九州大学病院 病態修復内科・遺伝子細胞療法部

造血幹細胞(HSC)がニッチと総称される特殊な環境において細胞周期静止状態にとどまっていることは、HSCの機能維持に欠かせない特性である。これまで、さまざまなストローマ細胞がHSCニッチの候補として同定されているが、骨髄における静止状態HSCの空間的位置は依然として明らかになっていなかった。そうしたなか、米国のアルバートアインシュタイン医科大学Paul Frenetteグループは、骨髄細動脈ニッチの存在とその役割を明らかにした。

そのNature誌掲載論文のfirst authorである國﨑先生が2014年4月に帰国したので、このたび研究成果を報告していただいた。

國﨑先生らの研究グループは、ホールマウント共焦点免疫蛍光イメージングとcomputational modellingを組み合わせた新しい方法を用いて、マウス骨髄における血管構造、ストローマ細胞およびHSCの3次元的関連性を分析した。

骨髄HSCニッチとしては、大別して骨芽細胞ニッチと血管性ニッチがあることはこれまでにわかっていた。骨髄血管構造は、中心静脈が骨髄中央を流れ、骨髄洞と骨内膜下に主に分布する非常に稀な細動脈からなる。

まず、ニッチを構成すると想定される骨髄洞性細胞と細動脈性細胞を表面マーカーおよび その形態により特定し、これら2種類の骨髄血管の分布を画像で捉えた。これとHSCの分布を対比すれば関係性がわかるわけであるが、骨髄洞と細動脈の存在比率の違いを考慮して、computational modellingによって、ランダムにHSCが分散した場合と対照して特異的な関連性があるかどうかを解析した。

その結果、静止期にあるHSCは骨内膜下に多く存在する細動脈と特異的に関連していることが判明した。

これらの細動脈は、骨髄洞周囲に存在するレプチン受容体(LepR)陽性細胞とは異なるNG2

(CSPG4)陽性ペリサイト(周皮細胞)によって覆われていた。

そして興味深いことに、HSC細胞周期を薬理学的または遺伝学的に活性化すると、HSCの分布がNG2陽性細動脈ニッチからLepR陽性骨髄洞ニッチへと変化した。つまり、静止状態では細動脈ニッチに存在していたHSCが、細胞増殖・動員状態になると骨髄洞性ニッチに移動することが示されたわけである(1)

さらに、NG2陽性細胞の特異的欠損により細動脈ニッチを障害してみると、HSC細胞周期が誘導され、骨髄中の長期生着能を有する機能的HSCが減少した。

以上の結果より、HSCの静止状態の維持に不可欠である細動脈ニッチの存在が明らかとなった。すなわち、骨髄細動脈は、骨髄体積の約1%を占めるに過ぎない稀な血管であるが、NG2陽性ペリサイトを伴って、HSCを静止状態に維持する特殊な環境(細動脈性ニッチ)を構成していると考えられる。

【参考文献】

  1. Kunisaki Y, et al. Arteriolar niches maintain haematopoietic stem cell quiescence. Nature 2013; 502: 637-43.

図 骨髄HSCニッチモデル