一般講演1-2

ヒト多能性幹細胞を用いた不死化巨核球細胞株の作製1)

中村 壮 先生

京都大学iPS細胞研究所 臨床応用部門

人工多能性幹細胞(iPS)の臨床応用に、さまざまな医療分野から大きな期待が寄せられている。その1つが血小板供給である。近年、献血者の減少により献血ドナーシステムにのみ依存した血小板供給体制の変革が必要とされている。特に、繰り返し輸血や感染症などに対応するために、新たな血小板大量ストック・オンデマンド供給システムが強く求められている。

そこで京都大学iPS細胞研究所(CiRA)は、ヒトiPSから機能を有する血小板を誘導する臨床応用可能な製作法を開発した。本シンポジウムでは中村先生が代表してその成果を紹介した。

すでに開発した直接分化培養による血小板産生で血小板製剤を作製した場合、膨大な培地が必要となり、効率面とコストが大きな問題となっていた2)。ここで着目したのが血小板前駆細胞である巨核球で、長期間にわたり自己複製できる巨核球の誘導を試みた。

まず、ヒト胚性幹細胞(ES)/iPS細胞からのヒト造血・巨核球分化過程におけるc-MYCの発現活性の挙動を解析した。その結果、c-MYC発現レベルがiPS細胞のクローンごとの増殖選択性に重要であることが示唆された2)

こうしたc-MYC発現活性化パターンをもとに、c-MYCともう1つ、細胞老化/死にかかわるINK4a/ARF gene locusの転写を抑制するポリコーム遺伝子BMI1を共発現させることによって、ヒトES/iPS細胞から自己増殖能を有するCD41a+巨核球細胞(megakaryocytic cell lines: MKCLs)を誘導し、その自己複製化に成功した1)

しかしながら、上記2因子のみを用いた場合、細胞増殖は3~8週間しか持続しない。それは、INK4a/ARF経路に依存しないカスパーゼ3/7上昇に関与するアポトーシス誘発が長期間の自己増殖能を阻害するためであることがわかった1)

そこで、アポトーシス制御遺伝子ファミリーの一種であるBCL-XLを新たにMKCLsに強制発現させたところ、5ヵ月以上にわたって安定的に自己複製する、凍結保存が可能な不死化巨核球細胞株(immortalized MKCLs: imMKCLs)の樹立に成功した(1)

このimMKCLsを成熟させて血小板を産生するためには遺伝子制御が必要であり、その増殖過程においてc-MYC、BMI1およびBCL-XLを薬剤依存システムによって制御してそれらの過剰発現を停止させると、巨核球成熟因子であるGATA1、NFE2、FOG1、β1-tubulinの発現の上昇、血小板産生形態であるproplateletが観察され、vWF受容体CD42b(GPIb-α)を高発現する血小板が放出された 1)

このimMKCL由来の血小板は、in vitroの血小板機能試験により、機能を有することがわかった。さらに、このimMKCL由来の血小板をNOGマウスに輸血したところ、in vivoでも確かにホスト由来の血小板とともに血栓形成に寄与し、機能を有していることが確認された1)

今後、適切に選択されたimMKCLクローンを樹立して、凍結保存可能なマスターセル・ワーキングセルバンク化による血小板供給システムの実現に向けて研究を続ける。現在、当研究室では、その臨床研究(試験)のための研究組織計画を練っており、最終的には上市に6~7年後の実用化を目指している。

【参考文献】

  1. Nakamura S, et al. Expandable megakaryocyte cell lines enable clinically applicable generation of platelets from human induced pluripotent stem cells. Cell Stem Cell 2014; 14: 535-48.
  2. Takayama N, et al. Transient activation of c-MYC expression is critical for efficient platelet generation from human induced pluripotent stem cells. J Exp Med 2010; 207: 2817-30.

図 安定的に増殖する不死化巨核球細胞株の作製に成功