一般講演1-1

IL-2による制御性T細胞の恒常性維持と治療応用1)

松岡 賢市 先生

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 血液・腫瘍内科学

同種造血幹細胞移植の進歩・普及により長期生存患者は増加したが、それに伴い慢性移植片対宿主病(cGVHD)患者数は増加の一途を辿っている。このcGVHDの克服という課題に対する一つの光明がみえつつある。この課題について、岡山大学を中心とする国内外の多施設共同研究グループによる成果を松岡先生が紹介した。

当研究グループは、すでに同種造血幹細胞移植後の免疫寛容の維持にはCD4+Foxp3+制御性T細胞(Treg)が重要な役割を果たしていること、また、低用量IL-2を連日投与すると機能的Tregが選択的に増加し、cGVHDの臨床症状が改善することを報告している2)。今回は、低用量IL-2療法の機序に関する最新の研究知見と臨床試験に向けての取り組みについて報告した。

cGVDHの主たる原因の1つと考えられるTregの恒常性の破綻(図1)、その結果としての免疫寛容の減弱に着目してみると、cGVHDでは、血漿IL-7およびIL-15濃度の上昇を背景に、通常型CD4+T細胞(Tcon)におけるStat5の恒常的リン酸化がみられる一方で、IL-2は長期的に低下しており、TregのStat5リン酸化に相対的な低下がみられた1)。つまり、TregとTconの間に恒常性不均衡が生じている。

これに対して、低用量IL-2補充は、導入期より速やかに、Treg選択的に恒常性シグナルを惹起し、TregにおけるStat5リン酸化の促進、およびTconにおけるStat5リン酸化の抑制をもたらし、Treg-Tcon間の恒常性不均衡を是正しうることがわかった1)

さらに8週間にわたる継続投与により、Tregの分裂促進、胸腺供出の増加、アポトーシスへの抵抗性増強など、Treg恒常性維持に重要な一連の変化を誘導した。一方、低用量IL-2はTconに対して、ほとんど影響を与えなかった1)

これらの所見から、低用量IL-2療法が移植後環境でのCD4+T細胞サブセットの恒常性を回復させ、免疫寛容構築を促進する機序が明らかになった。

これを受け、国内臨床治験に向けて、具体的に動きはじめている。より安全で長期投与を可能とする方法を探求するために、マウス前臨床試験を行った結果、IL-2の隔日投与でも連日投与と同等のTreg増加効果を得られることが示されている。また、米国での延長投与試験では、長期投与による効果の持続が確認されている。そこで、隔日投与による安全性の担保と長期的なTreg増加による臨床効果を検証する「治療抵抗性cGVHDに対する少量IL-2皮下投与の第I/IIa相試験」を実施することになった(図2)。対象はステロイド抵抗性cGVHD患者で、ステロイド抵抗性とは、PSL 0.5 mg/kg/dayの4週間投与で改善なし、と定義した。2015年より岡山大学を中心として本臨床試験は開始される。

【参考文献】

  1. Matsuoka K, et al. Low-dose interleukin-2 therapy restores regulatory T cell homeostasis in patients with chronic graft-versus-host disease. Sci Tranl Med 2013, Vol. 5, Isuue 179: 179ra43.
  2. Matsuoka K, et al. Altered regulatory T cell homeostasis in patients with CD4+ lymphopenia following allogeneic hematopoietic stem cell transplantation. J Clin Invest 2010; 120: 1479-93.

図1 Treg系再構築のモデル

図2 治療抵抗性cGVHDに対する少量IL-2皮下投与の
第I/IIa相試験導入期のTreg増加を維持する隔日IL-2投与による
安全性の担保と安定的なTreg増加